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Walk On By

  • 作曲: BACHARACH BURT F
#洋楽ポップス
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Walk On By - 楽譜サンプル

Walk On By|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Walk On By」は、作曲バート・バカラック、作詞ハル・デヴィッドによるポップ・ソングで、1964年にディオンヌ・ワーウィックが初録音・発表した代表曲。タイトなリズムに乗る短いフレーズ、ハーモニーの転調感、ストリングスとホーンの繊細なアレンジが特徴で、洗練と切なさを同居させる。レーベルはScepter Records。以後、数多くの歌手・バンドに取り上げられ、国際的ヒットとして広く知られるようになった。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、別れた相手に偶然出会った主人公が「気づかないふりをして通り過ぎてほしい」と願う心情を軸に展開する。表向きは冷静さを装いながら、内面では揺れ動く痛みを抱える二重構造が肝で、短い呼びかけの反復と休符の間合いが抑制された感情を強調する。恋の終わりを劇的に嘆くのではなく、プライドと自尊心を保つための距離感を選ぶ姿が、聴き手の共感を誘う。具体的なセリフの引用は避けつつも、行間に滲む未練と静かな決意が作品の核となっている。

歴史的背景

1960年代前半、ニューヨークのブリル・ビルディング的人材網と、Scepter Recordsの体制のもとで、バカラック/デヴィッドは高度な和声感と会話体の歌詞で新機軸を打ち出した。「Walk On By」はその成熟点のひとつで、ジャズの語彙を取り入れつつ、ラジオで映えるポップ性を両立。ワーウィックの滑らかな歌唱と指揮者としてのバカラックのコントロールが、都会的な失恋像を普遍化した。米英双方でヒットを記録し、国際的知名度を決定づけた。

有名な演奏・映画での使用

有名なカバーとしては、アイザック・ヘイズが1969年『Hot Buttered Soul』で披露した長尺のソウル・バージョンが象徴的。豊潤なストリングスとグルーヴで原曲の哀愁を拡張し、その後のR&B/ヒップホップに多大な影響を与えた。英国ではザ・ストラングラーズが1978年に新潮流的解釈でヒットさせ、ロック層にも浸透。ジャズ界でもインストゥルメンタルの定番として演奏が続く。映画やドラマでの具体的使用例は情報不明だが、映像文脈での引用も多いとされる。

現代における評価と影響

今日、本曲はバカラック/デヴィッド作品群の中でも「失恋の抑制美」を体現する基準曲として語られる。ソングライティングの教本・講義で分析対象となり、ポップ・アレンジの手本として参照される機会が多い。加えて、アイザック・ヘイズ版のサウンドはヒップホップを中心にサンプリングの源泉となり、世代を超えて再文脈化が進行。プレイリストやカバー・セッションを通じ、若い聴衆にも継続的に届いている。

まとめ

失恋の痛みを声高に叫ばず、抑えた身振りで伝える「Walk On By」は、時代を超える普遍性を持つ。精巧な作曲と簡潔な言葉運び、そして名唱が結びついたとき、ポップスはここまで深い感情を描ける――その事実を示す一曲である。