What'd I Say
- 作曲: CHARLES RAY

What'd I Say - 楽譜サンプル
What'd I Say|歌詞の意味と歴史
基本情報
What'd I Sayは、レイ・チャールズが作曲・作詞し、1959年にAtlantic Recordsから発表されたシングル。ライブの長い即興を基に生まれ、録音はThe Raelettesのコーラスと躍動的なリズムセクションを伴う。シングルはPart 1/Part 2に分割され、ポップチャートでトップ10入り、R&Bでも大ヒットを記録した。エレクトリック・ピアノ(ウーリッツァー)の唸るようなサウンドと手拍子、コール&レスポンスが核で、後のソウル/ロックの定型を早くから提示した画期的な一曲である。
歌詞のテーマと意味
歌詞の中心は、男女の掛け合いとフロアを煽る呼びかけにある。具体的なストーリーを詳細に語るより、クラブでの熱気、恋の駆け引き、身体性を強く喚起する表現が用いられる。意味は明快で、理屈よりもフィーリングを優先し、ヴォーカルとコーラスが応答する形式を通じて「音で会話する」快楽を描く。擬音的なフレーズや短いフックが観客の参加を誘い、ブラック・ゴスペルに根差したコール&レスポンスを世俗のダンス音楽へ架橋した点が、本作の象徴的意義である。
歴史的背景
1950年代末、ゴスペル的表現とR&Bの融合が加速する中、レイ・チャールズは即興を核にしたステージで新しいソウルの語法を切り開いた。What'd I Sayは、ステージの時間調整から生まれた長尺のジャムが原型とされ、録音後にラジオ放送向けへ分割されてシングル化。官能的なムードゆえに一部局で放送規制の対象にもなったが、その刺激的なグルーヴは若い聴衆を惹きつけ、黒人音楽の要素をポップ市場へ押し広げる決定打となった。
有名な演奏・映画での使用
本作は数多くのカバーで知られ、ジェリー・リー・ルイス、エルヴィス・プレスリー、ザ・ビーチ・ボーイズなどがステージの定番曲として取り上げた例がある。映画では、伝記映画『Ray/レイ』(2004)で重要な場面に登場し、作曲者の革新性とライブの熱気を可視化する役割を果たした。テレビやコンピレーションでも頻繁に取り上げられ、世代を超えて曲の認知を押し上げている。
現代における評価と影響
What'd I Sayは、ソウルの誕生を告げる転換点としてしばしば言及され、ポップとR&Bの垣根を超えたクロスオーバーの礎となった。コール&レスポンスの導入、電気的キーボードの前景化、観客参加型の構成は、ロックンロールからファンクに至るまで多くのライブ・アクトに受け継がれる。各種名曲リストでも高く評価され、今日でもクラブやフェスで通用する普遍的な推進力を保ち続けている。
まとめ
即興の閃きから生まれ、ダンスフロアの熱量をそのまま刻み込んだWhat'd I Sayは、レイ・チャールズの創造性と時代の変化を象徴する金字塔だ。歌詞は簡潔ながら演奏と不可分で、観客と一体化する仕組みこそがメッセージである。1959年の衝撃は今も色褪せず、ソウル/ロックのライブ文法の原点として、音楽史の中心に位置づけられている。