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Whistling Away The Dark

  • 作曲: MANCINI HENRY NICOLA,MERCER JOHN H
#洋楽ポップス
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Whistling Away The Dark - 楽譜サンプル

Whistling Away The Dark|作品の特徴と歴史

基本情報

Whistling Away The Dark は、作曲ヘンリー・マンシーニ、作詞ジョニー・マーサーによる映画主題歌。1970年公開の映画『ダーリング・リリィ』(監督ブレイク・エドワーズ)のために書かれ、ジュリー・アンドリュースが劇中で歌唱した。作品はアカデミー賞歌曲賞にノミネートされ、マンシーニ=マーサーという名コンビの成熟した筆致を広く印象づけた。映画内では歌唱版に加え、オーケストラによるインストゥルメンタルも用いられ、物語全体のトーンを規定する重要なテーマとして機能している。

音楽的特徴と表現

穏やかなテンポに乗せた陰影のある旋律線、柔らかいストリングスと木管を基調とする編曲は、マンシーニ特有の気品と抒情を備える。メロディはため息のように滑らかで、終止に向けて静かに収束する設計が、余韻の深い感情表現を実現。タイトルが示す“暗闇を口笛でやり過ごす”という比喩は、恐れや不安に直面した時の小さな勇気を象徴し、歌詞もその心理に寄り添う。映画では同主題が器楽的にも展開され、歌唱版とインスト版が相互に響き合うことで、主人公の内面や物語の陰影を音楽的に補強している。

歴史的背景

1970年前後はハリウッド大作ミュージカルの潮流が一段落しつつあった時期だが、本作はクラシカルなソングライティングの美質を保ちながら、映画のドラマを支える主題歌として力量を示した。ブレイク・エドワーズ作品におけるマンシーニの信頼は厚く、本曲も監督の映像美学と緊密に連動。マーサーのことば選びは過度な装飾を避け、状況の哀感と微かな希望を端正に結晶化している。結果として、映画音楽における“歌”の役割を再確認させる一曲となった。

使用された映画・舞台(該当時)

『ダーリング・リリィ』は第一次世界大戦期を舞台にしたロマンス/スパイ要素を含む映画で、主演はジュリー・アンドリュース。Whistling Away The Dark は主題歌として用いられ、劇中での歌唱シーンに加えて、象徴的なモチーフとして繰り返し登場する。オリジナル・サウンドトラックには歌唱版とインストゥルメンタル版が収録され、マンシーニ自身のオーケストレーションで構築された。公開年は1970年。

現代における評価と影響

本曲は、映画そのものの評価とは独立して、端正なメロディと洗練された和声感をもつ映画主題歌の好例としてしばしば取り上げられる。サウンドトラックやマンシーニ作品集で継続的に紹介され、クラシカルな歌心と映画的叙情のバランスを学ぶ教材としても価値が高い。歌唱版とインスト版の共存は、主題歌が劇伴の一部として機能しうることを示す事例として、作編曲家・シンガー双方にとって示唆的である。

まとめ

Whistling Away The Dark は、静謐で詩情豊かな旋律と精巧なオーケストレーションで、映画世界の感情を品位高く支えた主題歌である。マンシーニとマーサーの職人的な協働が生んだこの曲は、1970年の公開以来、映画音楽における歌の役割を示す端的な例として記憶され続けている。歌詞の全文はここでは紹介しないが、暗がりを前にしたささやかな勇気という核が、今日も色あせない普遍性を放ち続けている。