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Full House
- 作曲: MONTGOMERY WES

Full House - 楽譜サンプル
Full House|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Full House」はジャズ・ギタリスト、ウェス・モンゴメリー(1923–1968)の作曲。初出は1962年、カリフォルニア州バークレーのクラブTsuboでのライヴ録音で、アルバム『Full House』(Riverside)に収められた。共演はウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)、ジョニー・グリフィン(ts)。プロデュースはオリン・キープニュース。
音楽的特徴と演奏スタイル
ハードバップの語法を基盤に、スウィング感の強い中高速テンポで演奏されることが多い。メロディは端的でリフ的、ブルースの語彙を濃く帯び、ソロはヘッド–アドリブ–ヘッドの典型的フォームで展開。モンゴメリー特有のオクターブ奏法やブロック・コード、シングルノートの流麗なラインが要所を締め、リズム・セクションとの呼応が白熱する。ギター主導の合奏ながら、ピアノ・トリオの推進力が楽曲の躍動を支える。
歴史的背景
本作が録音された1962年は、モンゴメリーがRiverside期の集大成へ向かう過程にあり、クラブ空間の熱量をドキュメントする手法が注目された時期でもあった。西海岸の小規模ヴェニューで、東海岸系のハードバップ美学を濃密に提示した点も重要で、ギターが管楽器に伍してフロントに立つモダン・ジャズ像を強固にした。以後のギター奏者にとってのレパートリー形成に影響を及ぼした。
有名な演奏・録音
決定的なテイクはアルバム『Full House』に収録の初演ライヴ。ウィントン・ケリー・トリオを核とする鉄壁のリズム陣と、緊張感ある合奏が魅力で、以降、クラブや教育現場で取り上げられる定番曲となった。多くのギタリストやコンボが再演しているが、代表的カバーの網羅的リストは情報不明。採譜や教材は複数流通し、学習素材としての人気も高い。
現代における評価と影響
今日では“ウェスらしさ”を学ぶ必修曲として位置づけられ、オクターブとコード・ソロの運用、ブルースフィールとビバップ語彙の融合を実地で体得できる教材的価値が高い。ジャム・セッションでも親しまれ、ギターのみならずテナーやトランペットのレパートリーにも根付く。ライブでのダイナミクスと呼吸感を要するため、アンサンブル力の指標ともなる。
まとめ
「Full House」は、簡潔な主題と熱い即興が同居するモダン・ジャズの醍醐味を凝縮した一曲であり、モンゴメリーの表現美と小編成コンボのダイナミズムを体現する。1962年の初演ライヴは今なお鮮烈で、学習者から愛好家まで必聴のスタンダード。作曲者名や初出の確実な情報が揃っている点も、研究・紹介に適した名曲だと言える。