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Spain
- 作曲: COREA CHICK

Spain - 楽譜サンプル
Spain|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Spain」は、ジャズ・ピアニスト/作曲家チック・コリアによる代表曲で、初出はリターン・トゥ・フォーエヴァーのアルバム「Light as a Feather」(1972年)。本来はインストゥルメンタルで歌詞はない。以後、編成やテンポを自在に変えながら数多く演奏され、現在は世界的に知られるジャズ・スタンダードとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
冒頭ではホアキン・ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」第二楽章の旋律を引用した静謐なイントロが置かれ、続いて疾走感あるラテン/サンバ・フィールのテーマへ。明快なコード・ヴォイシング、シンコペーション豊かなユニゾン・ライン、切れ味の良いブレイクが聴きどころ。即興部は強い推進力のリズムに乗り、緊張と緩和を巧みに往復する。エレクトリック・ピアノ主体の原典的アプローチから、ピアノ・トリオやギター編成まで幅広く適応しうる可塑性の高さも魅力だ。
歴史的背景
1970年代初頭のジャズはエレクトリック化と越境志向が進み、コリアはブラジル出身のフローラ・プリム、アイアート・モレイラらと活動を展開。ラテンの語法とジャズ・フュージョンを統合しつつ、クラシック引用で「スペイン」の情景を喚起する本作は、その時代精神を象徴する一曲となった。エスニックな色彩と高度なハーモニー運用を併せ持ち、ジャンル横断の先駆的試みとして評価されている。
有名な演奏・録音
代表的な録音は、リターン・トゥ・フォーエヴァーによるオリジナル(1972年)。以降、コリア自身のアコースティック・トリオや各種ライブで再演を重ねたほか、歌詞を付したアル・ジャロウの「Spain (I Can Recall)」など多くのカバーが登場。フラメンコの巨匠パコ・デ・ルシアとの共演でも広く知られ、デュオからビッグバンドまで編成を超えて愛奏されている。映画での使用は情報不明だが、録音史上の名演は多数にのぼる。
現代における評価と影響
高度なリズム感と和声運び、記憶に残るテーマを併せ持つ本作は、演奏者にとって格好の腕試しであり、教育現場でも頻繁に扱われる。セッションでも人気が高く、速いテンポのラテン・グルーヴで盛り上がる定番曲として、世代や国境を越えて演奏され続けている。クラシック引用とジャズの融合という手法は後続の作曲・編曲にも影響を与え、スタンダード化以後も創造的解釈が更新されている。
まとめ
クラシック引用を起点にラテンの推進力で一気に展開する構成、鮮烈なメロディ、即興が映える進行。そのすべてが「Spain」を不朽の名曲たらしめた。チック・コリアの創造性と時代の越境性を体現する一曲として、今後もジャズ・シーンの中心で鳴り響き続けるだろう。