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I'm A Fool To Want You
- 作曲: WOLF JACK, HERRON JOEL S, SINATRA FRANK

I'm A Fool To Want You - 楽譜サンプル
I'm A Fool To Want You|楽曲の特徴と歴史
基本情報
1951年発表。作曲・作詞はフランク・シナトラ、ジャック・ウルフ、ジョエル・S・ヘロン。現在はヴォーカル曲として広く歌われるジャズ・スタンダード、いわゆるトーチソングとして知られる。初出はシナトラによるシングル録音で、その後も多くの歌手に取り上げられ続けている。歌詞の全文は割愛するが、未練と自己告白が核となる情感豊かなバラードである。
音楽的特徴と演奏スタイル
テンポは緩やかなバラード。ためを効かせた旋律線と半音階的な和声が切実さを強調し、長いブレスと繊細なダイナミクスが求められる。序奏でのルバート、弦楽中心のオーケストレーション、終止に向けた緊張と解放が定番の設計。ジャズ的には余白を生かしたフレージング、語り口のニュアンス、ビブラートのコントロールが解釈の要点となる。
歴史的背景
戦後アメリカのポピュラー・ソング黄金期に生まれ、哀愁のバラードとして瞬く間に広まった。シナトラは1951年に初録音し、のちに1957年のアルバムで再録音して自作の決定的解釈を提示。楽曲はクラブやコンサートのバラード枠で定番化し、レパートリー教育の題材としても扱われてきた。個人的背景に関する諸説はあるが、確証は情報不明。
有名な演奏・録音
代表例として、フランク・シナトラの1951年版と、再解釈となる1957年版が挙げられる。ビリー・ホリデイの1958年『Lady in Satin』は、熟れた声の陰影とレイ・エリス編曲による弦の響きで名唱として評価が高い。さらにボブ・ディランが2015年『Shadows in the Night』で取り上げ、世代とジャンルを越える普遍性を示した。
現代における評価と影響
この曲は「感情の彫琢」を学ぶ教材として、歌手・伴奏者の双方にとって重要な位置を占める。ジャズ・ヴォーカルのライヴでは、深夜帯のスロウ・チューンとしてしばしば選曲され、映画やドラマでの使用例も散見されるが、体系的な記録は情報不明。ストリーミング時代でもカヴァーが継続し、バラード解釈の基準点として生き続けている。
まとめ
「I'm A Fool To Want You」は、簡潔な素材に深い情念を託した20世紀バラードの到達点である。技術よりも語りの説得力が問われ、演じるほどに輪郭が変わる余白を備える。初演から70年以上を経ても色褪せず、世代を横断して新たな名唱を生み出す、そのしなやかな生命力こそが本曲の最大の魅力だ。