Alligator Boogaloo
- 作曲: DONALDSON LOU

Alligator Boogaloo - 楽譜サンプル
Alligator Boogaloo|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Alligator Boogalooはアルトサックス奏者ルー・ドナルドソン(作曲者表記:DONALDSON LOU)によるインストゥルメンタル楽曲。1967年に同名アルバムのタイトル曲としてBlue Noteから発表され、ドナルドソンの代表作の一つとして広く知られる。歌詞は存在せず、ダンスフロアに直結するキャッチーなリフと、オルガン編成による濃厚なグルーヴが核となる。録音にはルー・ドナルドソン(as)に加え、ロニー・スミス(org)、ジョージ・ベンソン(g)、レオ・モリス=イドリス・ムハンマド(ds)らが参加したことで知られ、ブルーノートのソウル・ジャズ路線を象徴する一曲として位置づけられている。
音楽的特徴と演奏スタイル
楽曲の肝は“ブーガルー”と呼ばれるR&B由来の強いバックビートと、ラテンの旨味をほのかに漂わせる跳ねるノリ。ドラムは2・4拍を明確に刻み、エイトフィール主体のビートで身体性を喚起する。オルガンは太いベースラインとコードのうねりでリズムを牽引し、ギターはカッティングと短いモチーフで隙間を埋める。アルトサックスはブルース語法に根ざしたシンプルなリフを起点に、反復と呼応(コール&レスポンス)で高揚を作るのが特徴的だ。複雑な和声展開よりも、耳に残るメロディとリズムの推進力に重点が置かれ、踊れるジャズを体現。ソロは過度な技巧誇示を避け、フレーズの間とグルーヴの継続に主眼がある。
歴史的背景
1960年代後半のアメリカでは、ハードバップからソウル・ジャズへと潮流が移り、クラブやジュークボックスで機能する“踊れる”ジャズが求められた。Blue Noteも市場の変化に応じてブーガルー/ファンキー色の強い作品を積極的に録音し、ドナルドソンはその中心的存在の一人だった。Alligator Boogalooはその文脈で生まれた代表曲で、親しみやすいフックと力強いグルーヴによって人気を博し、以降のドナルドソンのファンキー路線を決定づけた。
有名な演奏・録音
決定的なヴァージョンは1967年のオリジナル録音で、オルガンとギター、アルトサックスのコンビネーションが最良の形でパッケージされている。その後もドナルドソンはコンサートやクラブ・ステージで同曲をレパートリーとして取り上げ続け、ライブごとにテンポやソロの配分を変えながらグルーヴの快感をアップデートしてきた。Blue Noteの各種再発やコンピレーション、プレイリストでも定番的に紹介され、初学者からコレクターまで幅広い層に聴かれている。
現代における評価と影響
Alligator Boogalooは、ジャズとR&Bの親和性を示す好例として今日でも高い評価を受ける。洗練と土臭さが同居するサウンドは、レア・グルーヴやモッド・ジャズの文脈でも言及され、ダンスフロアとリスニング双方に耐える普遍性を備える。教育的観点でも、シンプルな素材から強固なグルーヴを生むアンサンブルの作法を学ぶ格好の教材となり、オルガン・コンボ編成のリファレンスとして参照され続けている。
まとめ
強靭なビート、覚えやすいリフ、オルガン編成の粘着質なうねり。Alligator Boogalooは、ソウル・ジャズ/ブーガルーの魅力を凝縮した一曲であり、ルー・ドナルドソンのアイデンティティを決定づけた名演である。歴史的背景と音楽的必然が結晶化したこの楽曲は、時代を超えて今なお新鮮な推進力を放ち続ける。