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I'm Beginning To See The Light
- 作曲: GEORGE DON, HODGES JOHNNY

I'm Beginning To See The Light - 楽譜サンプル
「I'm Beginning To See The Light|楽曲の特徴と歴史」
基本情報
「I'm Beginning To See The Light」は、1940年代スウィング期に生まれたジャズ・スタンダード。与えられたクレジットはGEORGE DON, HODGES JOHNNY。一般には作曲にデューク・エリントンやハリー・ジェイムズ、作詞にドン・ジョージが関与した共同作品として広く知られるが、詳細なクレジット表記は版や資料により差異がある。初出年は1944年とされ、当時のビッグバンド・レパートリーとしてダンスホールやラジオで親しまれ、のちにヴォーカル/インスト双方で定番化した。恋の気づきを軽妙に描く英語詞を持つが、本稿では歌詞の全文は扱わない。
音楽的特徴と演奏スタイル
中庸からミディアム・アップのスウィングが基調で、跳ねる4ビートに乗る快活なメロディが魅力。標準的なAABA型32小節形式に基づく作りで、A部はリフライクな上昇/下降モチーフが印象的、B部(ブリッジ)では和声が転換してコントラストを生む。ヴォーカルでは語り口のニュアンスとシンコペーションの扱いが要で、バックはホーンのコール&レスポンスやサブトーンのサックスがよく映える。インストではスウィング・フィールを保持しつつ、ii–V進行上のアドリブでブルージーなアプローチとビバップ的ラインの折衷が聴きどころ。テンポはセッションにより幅があり、シャッフル寄りのグルーヴも相性がよい。
歴史的背景
第二次世界大戦末期のアメリカで、ビッグバンドが依然強い人気を保つなか誕生。ダンサー向けの明快さと、ラジオ放送に適した覚えやすい旋律を兼ね備え、当時の聴衆に広く浸透した。スウィングからビバップへの端境期に位置し、ダンス・チューンでありながら、後年の小編成にも馴染む柔軟な和声運用を持っていたことが、長期的なスタンダード化につながった。出版譜や録音を通じてリードシートが普及し、歌手と管楽器奏者の双方に受け入れられたことも定番化の要因である。
有名な演奏・録音
代表的にはデューク・エリントン楽団、ハリー・ジェイムズ楽団によるビッグバンド録音が知られる。ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルドが取り上げ、彼女の解釈は以後の歌手に大きな指針を与えた。また、ザ・インク・スポッツによる録音もよく知られ、スウィングの持つ親しみやすさをポピュラー層に拡張した功績がある。現在まで多くの歌手・器楽奏者がレパートリーに加えており、ライブのセッションでも定番。映画・ドラマでの具体的使用作は情報不明だが、時代背景を示すジャズ・シーンのBGMとして採用例は少なくない。
現代における評価と影響
今日ではアメリカン・ソングブックを象徴する一曲として、音大・ジャズ教育現場でも扱われる。キャッチーな旋律と明解なフォームにより、即興の導入教材として適している一方、タイムの精度や歌詞のアクセント処理など、初級から上級まで課題が尽きない。アレンジの自由度が高く、スウィング、ラテン風、シャッフルなど多様な解釈が可能で、ヴォーカル・ジャズのステージでも観客との距離を縮めるナンバーとして重宝されている。
まとめ
「I'm Beginning To See The Light」は、スウィングの快活さと歌心を兼ね備えたジャズ・スタンダード。覚えやすい旋律、柔軟なハーモニー、歌詞の洒脱なアイロニーが相まって、時代を超えて演奏され続けている。初学者からベテランまで楽しめ、編成やテンポに応じた多彩な表情を見せる点が最大の魅力だ。作者クレジットは資料で差があるものの、1940年代ビッグバンド文化の結晶としての価値は揺るがない。