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I Got It Bad (and That Ain't Good)

  • 作曲: ELLINGTON EDWARD KENNEDY,ELLINGTON DUKE,GORDON IRVING
#スタンダードジャズ
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I Got It Bad (and That Ain't Good) - 楽譜サンプル

I Got It Bad (and That Ain't Good)|楽曲の特徴と歴史

基本情報

I Got It Bad (and That Ain't Good) は、Duke Ellingtonによる作曲のジャズ・バラード。初演は1941年、エリントン主宰のレビュー「Jump for Joy」で、イヴィー・アンダーソンが歌いました。歌詞はPaul Francis Webster。のちに多数の歌手・奏者に取り上げられ、アメリカン・ソングブックを代表するジャズ・スタンダードとして定着しています。

音楽的特徴と演奏スタイル

深いブルース感と洗練された和声が核。ゆったりとしたテンポのバラードで、メロディは半音階的な動きを含み、嘆きと甘美さが同居します。歌唱ではルバートを織り交ぜた間合いと後ノリ、微細なダイナミクス操作が重要。器楽ではアルトサックスやトランペットの抑制されたビブラートや、サブトーンを生かした歌心のあるアドリブが好まれます。ピアノは内声のボイスリーディングとテンション配置で陰影を作り、ドラムはブラシで呼吸感を支えるのが定石です。

歴史的背景

1941年の「Jump for Joy」は、当時の人種意識に挑む社会的メッセージを持つエリントンの舞台作品。そこから生まれた本曲は、ブルースの情感を保ちながら都会的な洗練を纏い、ビッグバンド期からビバップ以降にかけて広く演奏されました。戦中戦後のアメリカで、恋愛のやるせなさを気品あるバラードに昇華した点が評価され、歌手・演奏家双方のレパートリーとして受け継がれます。

有名な演奏・録音

初演のDuke Ellington Orchestra feat. Ivie Anderson(1941)が基準点。エラ・フィッツジェラルドは「Duke Ellington Songbook」で名唱を残し、エリントン楽団のジョニー・ホッジスは艶やかなアルトで本曲の抒情を象徴しました。以降、多くの歌手とサックス奏者が定番レパートリーとして取り上げ、ライブでもバラード・コーナーの核として重用されています。

現代における評価と影響

本曲はジャズ教育現場でもバラード表現の教材として扱われ、発声、フレージング、サステインの練習曲として定番。配信時代においてもプレイリスト常連のスタンダードで、ヴォーカル版・インスト版ともに新録が途切れません。ブルース由来の感情表現と高度な和声感の両立は、今日のシンガーや作編曲家にも示唆を与え続けています。

まとめ

I Got It Bad (and That Ain't Good) は、ブルースの魂とエリントン流のエレガンスが結晶したジャズ・スタンダード。歌でも器楽でも表現力が試される一方、聴き手には普遍的な切なさを届けます。1941年の誕生から現在まで、名演が更新され続ける理由は、その旋律と和声が時代を超えて語りかけるからにほかなりません。