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I Let A Song Go Out Of My Heart
- 作曲: ELLINGTON DUKE

I Let A Song Go Out Of My Heart - 楽譜サンプル
I Let A Song Go Out Of My Heart|楽曲の特徴と歴史
基本情報
I Let A Song Go Out Of My Heartは、作曲家デューク・エリントンが1938年に発表した楽曲。エリントン楽団のレパートリーから広まり、いまや定番のジャズ・スタンダードとして親しまれている。ボーカル曲として知られ、切ない情感を湛えたメロディが魅力。初出の録音はエリントン楽団による商業的成功を収めたテイクとして知られ、その後も多数の歌手・演奏家に取り上げられている。作詞者は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節のAABA形式を基本とし、耳に残る上行・下行のフレーズが要所で現れる。和声はスウィング期らしい循環進行を活かし、メロディの滑らかなレガートが感傷的なムードを生む。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く、ボーカルでは歌詞の余韻を活かす間合いが重視される一方、インストではホーン・セクションとソロのコール&レスポンスや、滑らかな抑揚のコーラス展開が映える。鍵盤・サックス・トランペットいずれでも主旋律が映える書法が特徴。
歴史的背景
1938年はスウィング時代の円熟期。エリントンはビッグバンドの色彩感と作曲家としての洗練を両立させ、ダンスホールの人気と芸術性を兼ね備えた作品群を送り出していた。本曲はそうした文脈の中で誕生し、ポピュラリティとジャズ的即興が共存するスタイルを代表する一曲となった。ラジオやレコードを通じて広範に親しまれ、やがて後世のスタンダード・レパートリーに定着した。
有名な演奏・録音
初期の代表的録音はデューク・エリントン楽団の1938年テイク。これがヒットとなり、曲の評価を決定づけた。以後、多数のシンガーが取り上げ、特にエラ・フィッツジェラルドは「エラ・フィッツジェラルド・シングス・ザ・デューク・エリントン・ソングブック」で洗練された解釈を残している。ビッグバンドから小編成コンボまで編成を問わず録音され、各時代のサウンドで再解釈が進んだ。映画やテレビでの使用に関しては情報不明。
現代における評価と影響
今日でもジャズ教育の現場やセッションで取り上げられる機会が多く、スタンダード集の重要曲として位置づけられている。ボーカリストにとっては歌詞の情感表現とレンジの扱いを学べる教材であり、インスト奏者にとっては歌心を損なわずにフレーズを構築する練習曲として有用。エリントン作品の中でも旋律の普遍性が高く、時代や編成を超えて息長く演奏され続けている。
まとめ
I Let A Song Go Out Of My Heartは、エリントンの作曲手腕とスウィング時代の美学を凝縮した名曲。情感豊かなメロディと柔軟な編曲適性により、発表から長い時を経ても揺るぎない存在感を保つ。初学者から上級者まで、表現力と聴かせる間合いを磨くのに最適なスタンダードである。