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St. Thomas

  • 作曲: ROLLINS SONNY
#スタンダードジャズ
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St. Thomas - 楽譜サンプル

St. Thomas|楽曲の特徴と歴史

基本情報

St. Thomasは、テナー・サックス奏者ソニー・ロリンズが1956年に発表した代表的ジャズ・ナンバー。初出はアルバム『Saxophone Colossus』の録音で、ロリンズ(ts)、トミー・フラナガン(p)、ダグ・ワトキンス(b)、マックス・ローチ(ds)が参加。軽快なカリプソのリズムを土台に、テーマとアドリブが明快に配置されたシンプルかつ強靭な構成が特徴。楽曲の詳細な調性や小節構成に関する統一見解は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

カリプソ由来のシンコペーションと4ビートを融合させたグルーヴが核。ドラムはハイハットやリムショットを活用し、オフビートの躍動感を前面に出す。ベースは反復的なラインで推進力を担い、ピアノはコンピングでリズムの隙間を彩る。ロリンズは短い動機を発展させるモチーフ奏法と、メロディックなアウトラインでソロを構築。テーマ—ソロ—ドラムとの4バース—テーマという定番形が多く採られるが、実際の構成はバンドや編成により可変である。

歴史的背景

1950年代半ば、ビバップ以降のジャズが多様化する中で、ロリンズはカリブ音楽の要素を自作に取り込み、独自の解釈で提示した。その象徴が本曲である。旋律の起源については、カリブの民謡に由来するとする説が広く語られる一方、出典を特定する決定的資料は情報不明。1956年の名アルバムでの鮮烈な録音がスタンダード化の起点となり、以後ロリンズのライヴでも頻繁に演奏された。

有名な演奏・録音

基準となるのは1956年のスタジオ録音。明確なテーマ提示、力強いテナーの展開、ローチのソロまで一体で完成度が高い。以後、ロリンズ自身のライヴ録音に加え、多くのジャズ・ミュージシャンが取り上げ、トリオ、カルテット、ビッグバンドなど編成も多彩に拡張された。特定の映画・映像作品での使用情報は情報不明だが、教育現場やステージでの定番曲として録音は数多い。

現代における評価と影響

St. Thomasは、初心者にも覚えやすい明快な主題と、即興の自由度が両立する教材的価値で高く評価される。カリプソとジャズの交差点として研究対象にもなり、リズム・トレーニングやモチーフ展開の訓練曲として広く用いられる。セッション現場ではテンポやキーを自在に変えたバリエーションが常態化し、世代や地域を超えて共通語のように演奏され続けている。

まとめ

カリプソの躍動感とロリンズの構築力が結晶したSt. Thomasは、録音以来ジャズの重要レパートリーとして定着した。由来の詳細に未解明な点は残るものの、シンプルな素材から豊かな即興を生む設計は普遍的で、入門者から上級者までを惹きつける。まずは1956年のオリジナル録音を基準に聴き、各演奏者のアプローチの違いを比較することで、楽曲の理解が一層深まるだろう。