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Libertango

  • 作曲: PIAZZOLLA ASTOR PANTALEON
#ラテン#タンゴ
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Libertango - 楽譜サンプル

Libertango|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Astor Piazzollaが1974年に発表した器楽曲。アルゼンチン・タンゴを刷新する“タンゴ・ヌエボ”の象徴作で、同年ミラノでの録音を収めたアルバム『Libertango』に収録。歌詞は存在せず、バンドネオンを中心としたアンサンブルで演奏される。タイトルはlibertad(自由)とtangoの合成語とされ、音楽的独立宣言の意味合いを帯びる。初演の詳細は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

低音のオスティナートと鋭いシンコペーションが推進力を生む。短調系の旋律は、バンドネオンの切れ味あるアタックとレガートを行き来し、ヴァイオリン、ピアノ、ギター、コントラバスが対位法的に絡む。典型的なスタイルは4拍子での強いアクセント、スタッカートとスフォルツァンドの対比、急峻なダイナミクス。演奏では拍節感の明確さ、オフビートの重み、フレーズ終端の呼吸が肝要で、ダンスの足取りを想起させる重心が求められる。

歴史的背景

ピアソラは伝統的タンゴにジャズや現代音楽の語法を導入し、1960年代以降“ヌエボ・タンゴ”を発展させた。1974年、活動拠点の一つだったイタリアで録音された本作は、その志向を端的に示す代表曲となる。タイトルが示す“自由”は、タンゴを舞踏伴奏の枠から解放し、コンサート用芸術音楽へと拡張する意思表明でもあった。初出の正確な公演データは情報不明だが、発表後まもなく国際的に広まり、レパートリーの核を占めるに至る。

有名な演奏・録音

作曲者自身による1974年ミラノ録音は決定的名演として参照される。その後も解釈の幅は広く、ヴァイオリニストのGidon Kremer(1996年『Hommage à Piazzolla』)、チェリストのYo-Yo Ma(1997年『Soul of the Tango』)、アコーディオニストのRichard Gallianoなど、多彩な編成で録音が重ねられた。室内楽版や吹奏楽、ギター合奏、二台ピアノ版などの編曲も多数流通し、演奏会では定番曲として扱われている。

現代における評価と影響

今日ではタンゴの入門曲であると同時に、リズムとアーティキュレーションの学習素材として音楽教育でも扱われることが多い。クラシック、ジャズ、ワールドの垣根を越えて演奏され、ダンス公演やメディア音楽でも広く引用される存在となった。力強いグルーヴと簡潔な動機がアレンジ適性を高め、ピアソラ作品への入り口として不動の地位を築いている。

まとめ

Libertangoは、伝統に根差しつつ革新を鳴らすピアソラの美学を凝縮した器楽曲である。オスティナート、シンコペーション、対位法的アンサンブルが生む緊張感は、踊れる音楽と鑑賞する音楽の境界を越境させた。多様な版で親しまれる現在も、その核にある“自由”の精神は色褪せない。