杏里
悲しみがとまらない
- 作曲: 林 哲司

悲しみがとまらない - 楽譜サンプル
悲しみがとまらない|歌詞の意味と歴史
基本情報
林哲司が作曲し、杏里が歌った代表曲「悲しみがとまらない(I Can't Stop the Loneliness)」は、1983年に発表されたシティ・ポップ期のヒット。作詞は康珍化。都会的なサウンド・プロダクションと切ないメロディの対比が魅力で、現在もコンピレーションや配信で定番として親しまれている。英題の併記により海外のリスナーにも認知され、時代を超えて聴かれる楽曲だ。
歌詞のテーマと意味
タイトルが示す通り、別れの後に押し寄せる感情の波を止められない主人公の独白が軸。強がりと未練、前に進もうとする意志と立ち止まってしまう心のせめぎ合いが、簡潔なフレーズの反復で浮かび上がる。夜の街の描写は、個人的な痛みを普遍的な経験へと架橋し、聴き手の記憶と共鳴。サビでは感情のピークを短い語で刻み、リズムと一体化した言葉運びが“とまらなさ”を音楽的にも裏づける。言葉数を絞った表現が空白を生み、そこに聴き手それぞれの物語が流れ込む設計になっている。
歴史的背景
1980年代前半、日本のポップスはAORやディスコの影響を吸収し洗練を深めた。林哲司はその中心的作家の一人で、本作もシンセと生演奏を融合させた質感が時代の空気を体現。杏里にとってもこの時期の代表作として知られ、彼女の“都会的でクールだが感情豊か”というイメージを決定づけた。音色設計やコーラスワークはのちのJ-POP制作に通じる指標となり、80sサウンドの典型例としてしばしば参照される。
有名な演奏・映画での使用
杏里本人のライブで長年愛唱され、テレビ音楽番組や各種ベスト盤でも再三取り上げられてきた。国内外のアーティストによるカバーも複数存在する一方、劇場映画での明確な使用例は情報不明。DJやセレクターの選曲でも定番化しており、ナイトライフの文脈で再発見が進んだ。編成を変えたアコースティック・アレンジや原曲に忠実なエレクトロ寄りの再現など、演奏アプローチの幅も広い。
現代における評価と影響
シティ・ポップ再評価の波の中で、本作は入門曲として紹介されることが多い。ストリーミング時代にも映える普遍性、歌とアレンジの均衡、英題の分かりやすさが強み。テンポやキーが落ち着いているため、カバーや編曲の自由度が高く、世代や国境を越えて更新され続けている。プレイリストやDJセットに馴染む長さと構成も現代的消費と相性が良く、リスナーの文脈に応じて新しい聴かれ方が生まれている。
まとめ
普遍的な失恋の感情を、洗練された都会的サウンドに落とし込んだ一曲。林哲司のメロディ設計と杏里の表現力が合致し、時代を超えて色褪せない魅力を放つ。制作陣の美学と80年代の潮流を凝縮した作品として、今後も多様な場で聴き継がれていくだろう。