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Straight, No Chaser
- 作曲: MONK THELONIOUS S

Straight, No Chaser - 楽譜サンプル
Straight, No Chaser|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『Straight, No Chaser』は、MONK THELONIOUS S(セロニアス・モンク)作曲の器楽曲で、ジャズ・スタンダードとして広く演奏される。タイトルは酒を“割りものなしで”というバースタームで、楽曲のストレートな推進力と飾り気のないブルース感覚を象徴する。初出年や初録音の詳細は情報不明。原曲はインストゥルメンタルであり、公式な歌詞は存在しないが、後年ボーカリーズ版が作られる例もある。
音楽的特徴と演奏スタイル
12小節のブルース形式を基盤に、短いモチーフを反復・変形するヘッドが特徴。半音階的な装飾音やシンコペーションが随所に現れ、モンクらしい角張った旋律線が耳を惹く。テンポはミディアムからアップまで幅広く、ソロではブルース語法とビバップ的ラインが交差する。ピアノやギターのコンピングは空白と強烈なアクセントを活かし、ドラムはライドのスウィング・パターンを軸に、ヘッドの決めやブレイクでダイナミクスを作る。アレンジではストップタイム、リフの分散配置、コール&レスポンスの処理などが定番。
歴史的背景
本作はモンクが確立した独創的なブルース語法の代表例であり、ビバップ以降のモダン・ジャズにおいて、単純な形式に高度なリズム感と和声感を持ち込む実験の結晶といえる。ブルーノート期からコロンビア期にかけての創作姿勢を映し、ジャム・セッションでの実用性と、作曲家としての個性を両立させたレパートリーとして定着した。
有名な演奏・録音
作曲者本人の各種セッションはもちろん、アルバム『Straight, No Chaser』における自身の演奏がよく知られる。加えて、Miles Davisの『Milestones』(1958)収録ヴァージョンは、躍動するソロワークと拡張されたブルース解釈で評価が高い。以降、多数のコンボやビッグバンドが取り上げ、教育現場でも定番教材となった。なお、1988年のドキュメンタリー映画『Thelonious Monk: Straight, No Chaser』は本作の題名を冠し、楽曲と作曲者名の再評価に寄与した。
現代における評価と影響
本作はセッション現場の“共通言語”として機能し、キーやテンポ、コーラス数を柔軟に設定できる点が支持される。リハーモナイズ、メトリック・モジュレーション、ポリリズムなど現代的発想との親和性も高く、トリオから大編成まで多様なフォーマットで更新され続けている。配信時代においても各種ストリーミングや動画で参照され、モンク作品群の入口としての地位を保つ。
まとめ
シンプルな12小節ブルースに、モンクならではのひねりと間合いが宿る『Straight, No Chaser』は、演奏者の創造性を際立たせる永続的なプラットフォームである。詳細な初出情報は情報不明ながら、名演の蓄積と現代的再解釈を通じ、今なおジャズの中心的レパートリーとして息づいている。