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久石譲

五月の村

『となりのトトロ』より

  • 作曲: 久石 譲
#ジブリ
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五月の村 - 楽譜サンプル

五月の村|作品の特徴と歴史

基本情報

久石譲作曲「五月の村」は、映画『となりのトトロ』(1988年公開)のために書かれた劇伴の一曲。サウンドトラックに収録されるインストゥルメンタルで、歌詞や作詞者は存在しない。編成はオーケストラを基調とし、素朴で牧歌的な音色が作品世界の核となる。主題歌とは別に、物語の空気や季節感を描くための重要なピースとして機能し、単独で聴いても映画の情景が浮かぶ親和性の高い楽曲である。

音楽的特徴と表現

穏やかなテンポと明るい和声進行、柔らかな弦楽に木管が寄り添う書法が特徴。短い動機の反復と緩やかなクレッシェンドが、初夏の風や里山の広がりを想起させる。旋律は歌いやすく、民謡的な親しみを帯びつつ、過度な感傷を避けた透明感がある。音量の起伏は大きすぎず、質感の変化で場面の移ろいを表す設計。ピアノやハープによる柔らかなアタックが色彩を添え、五感に寄り添う叙景性が聴き手を包み込む。

歴史的背景

久石譲は宮崎駿作品で『風の谷のナウシカ』(1984)、『天空の城ラピュタ』(1986)に続き『となりのトトロ』を担当。本作では派手なアクションより生活感と自然描写が主題となり、音楽も室内的で温かい響きへ舵を切った。その方向性を象徴する楽曲が「五月の村」である。1988年に映画公開とともにサウンドトラックが発売され、以後ジブリ作品を代表する音楽群の一部として長く愛されている。

使用された映画・舞台(該当時)

『となりのトトロ』(1988、監督:宮崎駿)の劇中で、村の風景や日常を描く場面に関連して用いられる楽曲として知られる。移ろう光や風、人々の営みを音で支え、画面のリズムを損なわずに叙情を加える役割を担う。物語やキャラクターの心情を直接語るのではなく、環境と時間の流れを静かに提示することで、観客の想像力を喚起するバックグラウンドミュージックとして機能している。

現代における評価と影響

サウンドトラックの再発や主要配信サービスで広く聴かれ、映画音楽の名曲として定着。コンサートではトトロ関連のメドレーやスイートの一部として取り上げられることがあり、穏やかな情景描写の代表例として演奏家・聴衆から支持を集めている。映像抜きでも場面が立ち上がる記憶喚起力は、久石譲の作風を特徴づける要素であり、作品理解や音楽鑑賞の入口としても価値が高い。

まとめ

「五月の村」は、派手さよりも息づく風景を描くことで世界観を強固にする楽曲である。牧歌的な旋律と柔らかなオーケストレーションは、映画の記憶を穏やかに呼び起こす。単独でも心地よく、サウンドトラック全体の流れの中では一層の説得力を持つ。久石譲の叙景的筆致を知るうえで格好の一曲として、オリジナル音源での鑑賞を勧めたい。