パリは燃えているか
NHKスペシャル『映像の世紀』テーマソング
- 作曲: 加古 隆

パリは燃えているか - 楽譜サンプル
パリは燃えているか|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「パリは燃えているか」は、作曲家・ピアニストの加古隆によるインストゥルメンタル。1995年に放送開始したNHKスペシャル『映像の世紀』のテーマ曲として発表され、以後シリーズの象徴的楽曲として広く知られています。ピアノを核に据えた室内楽的サウンドから、映像の重みと普遍的な哀感を引き出す設計が特徴。曲名は番組タイトルとともに強烈な印象を残し、日本のテレビ音楽史における代表的テーマ曲の一つとして定着しています。
音楽的特徴と演奏スタイル
静謐なピアノの反復動機(オスティナート)に、弦楽のレイヤーが段階的に重なり、抑制から昂揚へ向かうアーチを描く構成が中核。短いモチーフを積み上げる手法により、時間の推移や歴史の蓄積を思わせる推進力が生まれます。和声はクラシカルな語法を土台に、ミニマルや映画音楽的語彙を折衷。録音は残響を活かして映像との親和性を高め、過度な技巧誇示よりも語りの明晰さを重視します。コンサートではテンポやダイナミクスを拡張した編曲が行われ、ソロから小編成まで柔軟に演奏されます。
歴史的背景
本作は、20世紀の記録映像を丹念に編み上げるNHKスペシャル『映像の世紀』(1995)のために書かれ、番組の核となる感情と視点を音楽で支える役割を担いました。その後もシリーズの新展開である『新・映像の世紀』(2015)、『映像の世紀 バタフライエフェクト』(2023)において、主題として継続的に用いられ、時代に即した新録・再構成が行われています。放送の枠を超え、単独のコンサート・プログラムでも取り上げられるなど、メディアを横断して浸透しました。
有名な演奏・録音
放送に合わせてサウンドトラック盤がリリースされ、以降も作曲者自身による再録音やライブ音源が複数発表されています。ピアノ独奏版、小編成による室内楽的アレンジなど、用途に応じた多様なヴァージョンが存在し、番組視聴者のみならずクラシック/現代音楽の聴衆にも支持を広げました。加古隆はコンサートでもたびたび本曲を取り上げ、代表曲として定着。テレビ由来の楽曲ながら、録音・演奏の蓄積が作品としての自立性を押し上げています。
現代における評価と影響
重厚な歴史叙述に寄り添いつつ、単独でも成立する旋律美と構成力が評価され、テレビ音楽の範疇を超えたスタンダードとして受容されています。再放送や映像配信を通じて若い世代にも認知が広がり、ニュース映像やドキュメンタリーの文脈でしばしば参照される存在に。音楽家・制作者からは、反復動機と和声の緊張緩和による“語る音楽”のモデルケースとして言及されることが多く、劇伴とコンサートピースの橋渡しを示す成功例として位置づけられています。
まとめ
「パリは燃えているか」は、簡潔なモチーフと丹念なビルドアップで歴史の厚みを描き出した、加古隆の代表的インストゥルメンタル。NHK『映像の世紀』とともに歩みつつ、録音と演奏の蓄積により独立した作品価値を確立しました。映像と音楽の理想的な共振を体現する一曲です。