Modinha
- 作曲: DE MORAES VINICIUS,JOBIM ANTONIO CARLOS

Modinha - 楽譜サンプル
Modinha|歌詞の意味と歴史
基本情報
Modinhaは、Vinicius de Moraes(詞)とAntonio Carlos Jobim(曲)による楽曲。両者はボサノヴァ黎明を牽引した名コンビとして知られ、本曲もその文脈で知られる抒情的なバラードである。タイトルの“Modinha”はポルトガル語で「小さな歌」を意味し、18〜19世紀にブラジルで広まった感傷的な歌曲様式の呼称でもある。初出の年や初演・初録音に関する確定情報は情報不明。編成は歌とピアノ、もしくはギター伴奏で演奏されることが多く、繊細な旋律線と和声の移ろいが魅力とされる。
歌詞のテーマと意味
歌詞の全文はここでは扱わないが、本作はタイトルが示す伝統的“モジーニャ”の系譜に連なるため、恋や別れ、郷愁、時間の不可逆性といった感情を叙情的に歌い上げる解釈が一般的である。Vinicius de Moraesの詩作は平易な語彙で深い感情を喚起する点が特長で、静かな旋律に寄り添うように内省を促す。具体的な歌詞の場面設定や固有名は情報不明だが、言葉数を抑えた表現と音節の流麗さがポルトガル語の響きを際立たせ、淡い陰影を音楽に与える。
歴史的背景
1950年代末から1960年代にかけ、ジョビンとヴィニシウスは多数の名曲を生み、リオのサンバ・カンサォンから洗練された新感覚へと橋を架けた。Modinhaという題名の選択自体が、欧風の室内楽的感性とブラジルの歌曲伝統を結ぶ姿勢を象徴している。クラシカルな和声運びと都会的なハーモニー語法は、同時代のボサノヴァの潮流とも共鳴。舞台や映画との直接的関係については情報不明だが、両名の活動基盤(詩作・作曲・劇作)に見られる越境性が、この曲の気品ある佇まいにも滲む。
有名な演奏・映画での使用
本曲はブラジルの実力派歌手やジャズ系アーティストにより度々取り上げられてきたとされるが、決定的な代表録音や映画での使用情報は情報不明。一般に、ヴォーカルとピアノ(またはギター)による親密な解釈、室内楽的編成での繊細なダイナミクス、テンポを揺らしながら言葉を生かすルバート気味の歌唱が聴きどころとなる。インストゥルメンタル版では、主旋律の息長いフレージングと柔らかなテンション使いが映え、終止形の曖昧さが余韻を生む。
現代における評価と影響
Modinhaは、派手さではなく言葉と和声の品位で聴かせる楽曲として評価され、声楽リサイタルや小編成のライブで取り上げられることがある。ポルトガル語の自然なアクセントを保ちながら旋律を運ぶ発声技術や、和声の色彩変化を捉える伴奏づくりの教材としても有用とされる。ジャズ/ボサノヴァ系のミュージシャンにとっては、自由度の高いルバートと精緻なコード・ヴォイシングを学べるレパートリーとして意義が大きい。
まとめ
Vinicius de MoraesとAntonio Carlos Jobimの共作「Modinha」は、伝統的歌曲様式への眼差しとモダンな和声感が結晶した抒情的名品である。初出年や特定の代表録音は情報不明ながら、静謐な美しさと詩の響きを生かす構造が、多様な歌い手・奏者に開かれた解釈の余地を提供し続けている。