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Tenor Madness

  • 作曲: ROLLINS SONNY
#スタンダードジャズ
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Tenor Madness - 楽譜サンプル

Tenor Madness|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Tenor Madness」はソニー・ロリンズ作曲の12小節ブルース。1956年にPrestigeから発表されたアルバム『Tenor Madness』で初出。歌詞は存在せず、テナー・サックス主体の小編成コンボによる器楽曲として広く演奏される。初演盤ではロリンズ(ts)とジョン・コルトレーン(ts)が共演し、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)が伴奏を務めた。調性はB♭ブルースが通例で、テンポはミディアム〜アップ。ジャム・セッションの定番として定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

ヘッドは短いリフを基調にしたシンプルな旋律で、ブルースのAAB句型に沿って進行する。コードは基本形のB♭ブルースを土台にしつつ、演者によりII–Vやトライトーン置換などの代替進行が加えられることも多い。ソロ・コーラスを重ねやすく、スウィングするウォーキング・ベースとライド・シンバルの推進力の上で、テナーのブロウを存分に展開できる構造が魅力。録音ではテナー同士のコール&レスポンスや4小節交換が映え、“テナー・バトル”の醍醐味を味わえる。

歴史的背景

発表当時の1956年はハード・バップが爛熟した時期で、ニューヨークのジャム・シーンが活況だった。ロリンズは既に気鋭のテナー奏者として頭角を現し、コルトレーンはマイルス・デイヴィスのグループで台頭していた。Prestigeの録音により両雄の邂逅が記録され、同時代のリズム・セクション(ガーランド、チェンバース、ジョーンズ)の堅固なサポートが楽曲の魅力を一層引き立てた。この曲はロリンズの作曲家・即興家としての個性を象徴する代表作として位置づけられている。

有名な演奏・録音

最重要の参照音源はアルバム『Tenor Madness』収録のオリジナル録音で、二人のテナーが入れ替わりにコーラスを重ねる構成と、各自の音色・フレージングの対比が聴きどころとなる。以後、ロリンズ自身のコンサートやセッションでたびたび演奏され、教育現場やプロ・アマ問わず多くの奏者がレパートリーに加えてきた。ライブごとにテンポやコーラス数、エンディングの処理が変わる点も、スタンダードとしての懐の深さを示している。

現代における評価と影響

「Tenor Madness」はテナー奏者のみならず、ブルース語法とハード・バップの基礎を学ぶ教材として重宝される。シンプルな主題と開かれたブルース進行は、音色、タイム、モチーフ展開、インタープレイを鍛える格好の土台であり、セッション初対面の演者同士でも音楽的会話を成立させやすい。録音史上の名共演を生んだ曲として、今日もジャズ・クラブや学生バンドの現場で息長く演奏され続けている。

まとめ

簡潔なリフ、汎用性の高いB♭ブルース、そして歴史的共演という三位一体の魅力が、この曲を不朽のスタンダードへと押し上げた。入門者には取り組みやすく、上級者には表現の余地が広い。まずは1956年のオリジナル録音を手がかりに、各演者のアプローチの違いを聴き比べることで、曲の懐とジャズのダイナミズムを実感できるだろう。