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Infant Eyes

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#スタンダードジャズ#フュージョン
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Infant Eyes - 楽譜サンプル

Infant Eyes|楽曲の特徴と歴史

基本情報

『Infant Eyes』はサックス奏者ウェイン・ショーターの代表的バラード。Blue Noteの名盤『Speak No Evil』に収録され、ニューヨークで1964年12月24日に録音。編成はショーター(ts)、フレディ・ハバード(tp)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。初出年は資料に揺れがあるため情報不明。楽曲は現在、ジャズ・スタンダードとして広く演奏され、教育現場やセッションでも定番曲となっている。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポは極めて遅いバラード。旋律は長い弧を描き、音価の伸びと間合いが表情の核となる。調性は明確に限定されず、和声は機能和声から自由になった進行をとり、テンションを多用。ピアノは繊細なボイシングで持続音を支え、ドラムは主にブラシを用い静かな立ち上がりを作る。ホーンのユニゾン/ハーモナイズによるテーマ提示後、各ソロは音数を絞りダイナミクスで物語るのが典型的な演奏スタイルである。

歴史的背景

本作が生まれた1960年代半ば、ショーターはブルーノート諸作で作曲家としての評価を決定づけ、同時期にマイルス・デイヴィス第2期クインテットでも活動。ハードバップの語法を基盤に、モーダル以降の自由度と詩的抒情を融合させた作風が成熟した。『Speak No Evil』はその頂点の一つであり、『Infant Eyes』はアルバムの緊張感の中で静謐と余韻を担う重要トラックとなっている。

有名な演奏・録音

初演として広く知られるのは『Speak No Evil』収録ヴァージョン。以後、ショーター自身の各時代のバンドでも再演され、アコースティックからエレクトリックまで多彩に解釈された。さらに多数の演奏家が録音を残しており、ピアノ・トリオやサクソフォン・カルテットなど編成も多岐にわたる。なお、ダグ・カーンのアルバム『Infant Eyes』(1971)では歌詞を付したヴァージョンも発表された。

現代における評価と影響

現在でもオーディション曲や発表会のバラード枠として高い人気を保ち、リアルブック等の資料にも定着。和声の曖昧さと歌心を両立させる課題曲として教育的価値が高い。また、ビッグバンドやストリングスを加えたアレンジにも相性が良く、コンサートでの映えも抜群。作曲面では、機能和声に拠らない進行で深い感情を描く手法の好例として多くの作曲家・編曲家に影響を与えている。

まとめ

静けさの中に深い詩情を宿す『Infant Eyes』は、ウェイン・ショーターの作曲美学を最も端正に示す一曲。演奏者には音数よりも余白の扱いを、聴き手には長い呼吸と余韻の味わいを促す、時代を超える名作である。