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Fly Me To The Moon

  • 作曲: HOWARD BART
#スイング#スタンダードジャズ
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Fly Me To The Moon - 楽譜サンプル

Fly Me To The Moon|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Fly Me To The Moon」はBart Howardが1954年に発表したボーカル曲。原題は「In Other Words」だが、後年サビのフレーズにちなんだ現行タイトルが広く定着した。ジャズ・スタンダードとして世界的に歌われ、英語圏のみならず多言語でのカバーも多い。形式はジャズでおなじみの32小節AABA。初期はナイトクラブやキャバレーの文脈で親しまれ、のちにビッグバンドや小編成コンボ、弾き語りに至るまで多彩な編成で演奏される定番曲となった。

音楽的特徴と演奏スタイル

原曲は3/4拍子の穏やかなワルツ感を持つが、後年の代表的な演奏では4/4のスイングへと転化されることが多い。和声進行は循環進行を用いた滑らかな機能和声が軸で、メロディは上昇・下降のコントラストが美しい。歌唱ではルバート気味のイントロからテンポインする手法や、ブレス位置の工夫で言葉の情感を高める解釈が定番。リハーモナイズやボサノヴァ化も相性が良く、ブラシワークの繊細なドラム、ウォーキング・ベース、ボイシングを絞ったピアノ/ギターが歌を支えるのが王道である。

歴史的背景

1954年にKaye Ballardが初録音。60年代初頭にはテレビやライヴでの歌唱を通じて人気が拡大し、タイトルも「Fly Me To The Moon」の呼称が主流に。1964年、フランク・シナトラがクインシー・ジョーンズ編曲、カウント・ベイシー楽団を従えた軽快なスイング版を発表し、曲の国際的な知名度が決定的となった。宇宙時代の想像力とロマンを重ね合わせる歌詞のイメージは、60年代の時代精神とも響き合い、スタンダードとしての地位を強固にした。

有名な演奏・録音

代表格はフランク・シナトラ(1964)。しなやかなスイング感とビッグバンドの躍動が、今日の解釈の基準点となった。初録音のKaye Ballard(1954)は史料的価値が高く、ペギー・リーやジュリー・ロンドンの艶やかなボーカルも愛好家に評価される。さらに本曲はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングとして複数のカバーが使用され、若い世代へと再浸透した。ジャズ・クラブではボーカル・セッションの常連曲で、ピアノ・トリオによるインスト解釈も盛んである。

現代における評価と影響

本曲は「歌詞と旋律の親密な結び付き」と「編曲に対する懐の深さ」を兼ね備え、教育現場でも頻繁に取り上げられる。テンポ、拍子、ハーモニーを柔軟に変えられるため、初学者の基礎訓練から上級者の表現研究まで幅広く機能する。映画・CM・配信サービスでの露出も多く、世代横断的な認知を維持。ライブではバラードからスイング、ボサノヴァまで空間に応じた温度感を作りやすく、セットリストの要所を支えるスタンダードとして定着している。

まとめ

「Fly Me To The Moon」は、洗練されたメロディと柔軟なハーモニー、そして宇宙的比喩を湛えたロマンティックな歌詞が三位一体となった名曲である。1950年代のクラブ・ソングから出発し、シナトラの名演を経て世界標準のレパートリーへ。今日もなお演奏解釈の更新が続き、ジャズ入門から愛好家までを魅了し続ける。