BALADA PARA UN LOCO
- 作曲: PIAZZOLLA ASTOR PANTALEON

BALADA PARA UN LOCO - 楽譜サンプル
BALADA PARA UN LOCO|歌詞の意味と歴史
基本情報
「BALADA PARA UN LOCO」は、アストル・ピアソラが作曲し、オラシオ・フェレールが作詞したヌエボ・タンゴの代表曲。1969年に発表され、初演歌手はアメリータ・バルタール。スペイン語(リオプラテンセ方言)とルンファルドの語彙を交え、語りと歌が交錯するドラマティックな構成が特徴で、バンドネオンを核としたアンサンブルで演奏されることが多い。
歌詞のテーマと意味
歌詞はブエノスアイレスの街角を舞台に、“狂気”を帯びた語り手が恋人を日常からの逃走へ誘う物語。アベニーダ・コリエンテスなどの地名とルンファルドが印象的で、奔放な独白と甘美な旋律の対比が現実と夢想の揺らぎを際立たせる。“狂気”は逸脱ではなく、創造的自由と愛の飛翔のメタファーとして機能する。
歴史的背景
1960年代後半、ピアソラはクラシックとジャズの語法を取り込み、伝統タンゴを刷新する運動を推し進めていた。本作はその文脈で生まれ、斬新な語り口と和声処理により瞬く間に話題に。大衆的な成功を収める一方、保守的な聴衆からは“タンゴらしくない”とする批判も受け、ヌエボ・タンゴをめぐる議論を象徴する楽曲となった。
有名な演奏・映画での使用
初演と初期の決定版としてはアメリータ・バルタールの録音が広く知られる。続いてロベルト・ゴジェネチェの名唱がレパートリーを確立し、スサナ・リナルディら多くの歌手が取り上げた。ピアソラ自身の各アンサンブルでもたびたび演奏され、器楽版も普及。映画での顕著な使用は情報不明。
現代における評価と影響
現在、「BALADA PARA UN LOCO」はヌエボ・タンゴの定番として世界各地で上演され、クラシックやジャズの奏者にも広く取り上げられる。語りと歌の二層構造は演者の表現力を要求し、舞台でも強いドラマ性を生む。都市文化とタンゴの言語を学ぶ手がかりとしても参照されることが多い。
まとめ
革新性と大衆性を併せ持つ本作は、ピアソラの美学を凝縮した名曲。都市の熱と詩情を帯びた物語性が、半世紀を経ても色褪せず、聴き手に新たな自由の感覚を呼び覚ます。