EL CHOCLO
- 作曲: VILLOLDO ANGEL

EL CHOCLO - 楽譜サンプル
EL CHOCLO|楽曲の特徴と歴史
基本情報
EL CHOCLOは、アルゼンチンの作曲家アンヘル・ビジョルドによる代表的タンゴ。1903年作とされ、当初は器楽曲として普及した。その後に多彩な編曲や歌詞版も生まれ、英語版のKiss of Fireの原曲としても知られる。題名の El Choclo はスペイン語でとうもろこし(の穂)の意で、ブエノスアイレスの庶民文化に根差した香気を帯びる。
音楽的特徴と演奏スタイル
力強い2拍子にハバネラ由来のシンコペーションが絡む王道のタンゴ語法。短調を基調とする旋律は哀愁と緊張を帯び、フレーズの切り返しで劇的に高揚する。バンドネオンとヴァイオリンの掛け合い、マルカートの刻み、アラスレ(引きずり)やルバートの間合いが核心。オルケスタ編成はもちろん、ピアノ独奏やギター二重奏、室内楽への展開も容易で、編曲耐性が高い。
歴史的背景
20世紀初頭のブエノスアイレスで、移民文化と舞踏の融合から生まれたタンゴがサロンへ進出する局面で、本作は象徴的存在となった。ビジョルドは黎明期の要人で、街場の節回しを洗練させ、ダンスと結びついた新たな都市音楽の礎を築いた。やがて欧州へ広がるタンゴ・ブームにおいても、EL CHOCLOは知名度拡大の原動力の一つとなる。
有名な演奏・録音
録音史は膨大で、黄金期の主要オルケスタがこぞってレパートリー化している。テンポ設定はミロンガで踊りやすい中庸から、コンサート向けの劇的解釈まで幅広い。1950年代には英語詞のKiss of Fireが世界的ヒットを記録し、ポピュラー音楽の文脈でも存在感を示した。ピアノ、ギター、室内楽、交響編曲まで、媒体を問わず多くの名演が残る。
現代における評価と影響
現在もダンス現場と教育で頻用され、明快な旋律とフォームは装飾や対旋律、リズム・ヴァリエーションの実習に最適。クラシックやジャズ系のクロスオーバーでも取り上げられ、初学者から名手まで腕前を映す基準曲として機能している。タンゴの顔としての普遍性は、世代と国境を超えて継承されている。
まとめ
EL CHOCLOは、タンゴの語法を凝縮した不朽の基準曲。編成や解釈の自由度が高く、演奏者とダンサーの創造性を刺激し続ける。ビジョルドの創意が宿る旋律とリズムは、今なお第一線で生命力を放つ。