CAMBALACHE
- 作曲: DISCEPOLO ENRIQUE SANTOS

CAMBALACHE - 楽譜サンプル
CAMBALACHE|歌詞の意味と歴史
基本情報
『CAMBALACHE』は、アルゼンチンの作曲家・詩人エンリケ・サントス・ディセポロが1934年に書いたタンゴ・カンシオン。スペイン語の語義は「がらくた市」「寄せ集め」。哀感の旋律と語り口の強い歌唱が映える構成で、タンゴの中でもメッセージ性の濃いレパートリーとして知られる。作曲・作詞はいずれもディセポロ。初出の媒体や初演歌手は情報不明。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、善悪の境目が曖昧になった現代社会を皮肉と怒りで描く社会風刺。利己主義や腐敗、見せかけの成功が横行する現実を列挙し、道徳の相対化を告発する内容だ。ブエノスアイレスの俗語ルンファルドを交えることで、街のリアリティと辛辣なウィットを両立。甘美な郷愁ではなく、現実への直視を促す姿勢が印象的で、聴き手に強い思考を喚起する。
歴史的背景
1930年代のアルゼンチンは政治的不安と世界恐慌後の停滞に覆われ、不信感が広がっていた。本作はその空気を凝縮し、タンゴが舞踏音楽を超え、市井の心情や時代批評を担う表現であることを明示した。ディセポロは鋭い社会観察で知られ、この作品でも時代の混沌と倫理の崩れを普遍的なテーマへと結晶化している。
有名な演奏・映画での使用
録音は数多く、フリオ・ソーサやロベルト・ゴジェネチェの名唱が代表的とされる。エドムンド・リベロやティタ・メレージョ、アドリアナ・バレラらも取り上げ、世代を超えて解釈が更新されてきた。映画・テレビでの使用例は多いとされるが、具体的な作品名は情報不明。いずれの版でも、語りの間合いとテキストの明晰な提示が解釈の鍵となる。
現代における評価と影響
今日『CAMBALACHE』はタンゴ屈指のスタンダードとして、コンサートや録音で定番化。社会の混沌や価値の錯綜を語る比喩としてもしばしば引用され、時代が変わってもメッセージ性は色あせない。歌い手の人格と語りの精度が直に問われるため、表現者の力量を測る曲としても位置づけられ、音楽学・文化研究の対象として継続的に検討されている。
まとめ
辛辣な歌詞と哀切な旋律が融合した『CAMBALACHE』は、時代批評としてのタンゴを象徴する一曲。普遍的テーマと鮮烈な語り口により、現代にも通用する洞察を放ち続ける。録音の豊富さは解釈の幅広さを示し、今なお演奏・研究の両面で重要性を保っている。