EN ESTA TARDE GRIS
- 作曲: MARTINEZ MARIANO ALBERTO,MORES MARIANITO

EN ESTA TARDE GRIS - 楽譜サンプル
EN ESTA TARDE GRIS |歌詞の意味と歴史
基本情報
「EN ESTA TARDE GRIS」はアルゼンチン・タンゴの代表曲の一つ。作曲者としてクレジットされる「MARTINEZ MARIANO ALBERTO, MORES MARIANITO」は、いずれも名匠マリアーノ・モーレス(本名マリアーノ・アルベルト・マルティネス)を指す異表記である。作詞はホセ・マリア・コントゥルシ(José María Contursi)。1941年の作品として広く知られ、スペイン語の歌詞を伴うタンゴ・カンシオンに分類される。初演歌手や初録音の詳細は情報不明。
歌詞のテーマと意味
題名は「この灰色の午後に」の意。歌詞は、過ぎ去った恋を思い返す一人称の独白で構成され、曇天や静かな雨などの気象描写を感情の陰影に重ねる。失われた時間への悔恨、戻らぬ相手への呼びかけ、沈黙と孤独の重さが反復され、心情は親密でありながら普遍性を持つ。コントゥルシ特有の内省的で映画的なイメージが、モーレスの流麗な旋律と濃やかな和声運びにより増幅され、ダンスフロアでも鑑賞用としても強い情感を喚起する。
歴史的背景
1940年代前半のブエノスアイレスは、いわゆるタンゴ黄金時代。ラジオ放送と舞踏の隆盛により、歌付きタンゴが大衆文化の中心に立った。モーレスは伝統的タンゴの語法に洗練された和声感と劇的起伏をもたらし、コントゥルシは都市的な憂愁と心理描写で共感を広げた。本曲は、その二人の美学が結晶したレパートリーとして受容され、舞踏会場とカフェ、劇場を横断して広まった。作曲・作詞の経緯の細部や初演会場は情報不明。
有名な演奏・映画での使用
「EN ESTA TARDE GRIS」は、多くのオルケスタ・ティピカと看板歌手によって録音され、器楽版でも頻繁に演奏されてきた。歌唱版ではテノール寄りの明晰な発声から渋いバリトンまで解釈の幅があり、テンポはミロンガ向けにやや抑制された中庸が好まれる傾向がある。商業映画やドラマでの具体的な使用記録は情報不明だが、コンサートやミロンガの定番曲として親しまれている。代表的録音の詳細な年表も情報不明。
現代における評価と影響
現在も世界各地のタンゴ楽団、歌手、バンドネオン奏者の重要レパートリーであり、歌詞解釈とフレージングの教材曲としてもしばしば取り上げられる。ハーモニーの受容性が高く、ピアノ・ギターのデュオからフル編成まで編曲の自由度が大きい点も継続的な支持の理由である。配信時代においても各種録音が聴取され、クラシックやジャズのアーティストが跨領域的にカバーする例もある。初出のチャート成績や受賞歴は情報不明。
まとめ
灰色の午後という普遍的な情景に、失恋の痛みと回想を重ねた本曲は、歌詞と旋律の相互作用が生む叙情の高さで、タンゴ・カンシオンの真価を示す。詳細資料に未解明の点はあるものの、舞台と日常の双方で息長く演奏される名曲として、今後も解釈の深化と新録の積み重ねが期待される。