あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

EL ENTRERRIANO

  • 作曲: MENDIZABAL ANSELMO ROSENDO CAYETANO
#タンゴ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

EL ENTRERRIANO - 楽譜サンプル

EL ENTRERRIANO|楽曲の特徴と歴史

基本情報

EL ENTRERRIANOは、MENDIZABAL ANSELMO ROSENDO CAYETANO(ロセンド・メンディサバル)による器楽タンゴ。1897年に楽譜として出版された、最初期の著名なタンゴの一つとして広く認識されている。タイトルの“El Entrerriano”はアルゼンチンのエントレ・リオス州の出身者を意味し、地方色を帯びた呼称が付けられている点も当時のタンゴらしい。歌詞付きの定着版は確認されておらず、現在も主に器楽曲として演奏される。

音楽的特徴と演奏スタイル

旧世代(グアルディア・ビエハ)に属するこの曲は、ハバネラ由来のシンコペーションと明快な二拍系の推進力が核。ピアノ独奏では左手のマルカートが地を支え、右手は装飾音や経過音を交えた歌心ある旋律を紡ぐ。形式は複数のセクションが反復・対置される舞曲的構成で、ダンサーが踏みやすい明瞭なフレーズが整えられている。オルケスタ・ティピカ編成では、バンドネオンとヴァイオリンが主旋律と対旋律を受け渡し、ピアノとコントラバスがリズムの輪郭を強調。中庸テンポでのスタッカート気味のアーティキュレーションが、古風な色合いと踊りやすさを両立させる。

歴史的背景

19世紀末のブエノスアイレスで、タンゴは港湾地区や社交サロン、移民文化の交差点で急速に形作られていった。アフロ・アルゼンチン系ピアニストとして知られるメンディサバルは、その中心的時期に活躍し、本作の出版はタンゴが口承や現場の即興を越えて、楽譜文化へと歩み出す転機を示す。印刷物として広まったことで、地域的な流行を超えて標準化が進み、後の編曲や合奏形態の発展にもつながった。

有名な演奏・録音

EL ENTRERRIANOはピアノ独奏版に加え、バンドネオン主体のオルケスタ・ティピカや室内楽風の編成まで、多様なスタイルで録音が重ねられてきた。古典的奏法を尊重した再現的解釈から、対位法的に厚みを増した現代的アレンジまで幅広い。初演者や初出録音の詳細は情報不明だが、現在はアーカイブ音源やストリーミングで複数バージョンを容易に聴取でき、演奏比較の対象としてもしばしば取り上げられる。

現代における評価と影響

本作は「初期タンゴの典型」として教育現場やワークショップでも引用され、タンゴのリズム語法・フレージング・アーティキュレーションを学ぶ格好の手がかりになっている。ダンスの実践面でも、歴史的スタイルを体感できる定番曲として重宝され、レパートリーの基礎を形作る。編曲素材としての汎用性も高く、ギター合奏や室内楽編成への移植例が継続的に生まれている。

まとめ

EL ENTRERRIANOは、出版物としての広がりと舞曲としての実用性を兼ね備えた初期タンゴの金字塔。ハバネラ由来の推進力、明快な構成、編成を問わない適応力が長寿命の理由であり、今日も学習・演奏・舞踏のあらゆる現場で参照され続けている。