FLOR DE LINO
- 作曲: STAMPONI HECTOR LUCIANO

FLOR DE LINO - 楽譜サンプル
FLOR DE LINO|歌詞の意味と歴史
基本情報
「FLOR DE LINO(フロール・デ・リノ)」は、アルゼンチンの作曲家Héctor Luciano Stamponiによる歌ものタンゴ。作詞はHomero Expósito。原語はスペイン語で、抒情性に富むタンゴ・カンシオンとして知られる。発表年は情報不明。演奏形態は歌とオルケスタ、もしくはピアノやギター伴奏の小編成が一般的で、ミロンガ(タンゴのダンス場)でも親しまれている。
歌詞のテーマと意味
タイトルの“リネンの花(亜麻の花)”は、清らかさや儚さの比喩として機能し、失われた恋や過ぎ去った時間への郷愁を象徴する。語り手はかつての恋人への記憶をたどり、都市の孤独と自然のイメージを交錯させながら、淡い幸福と取り戻せない喪失感を描く。直接的な嘆きよりも、慎ましい言葉選びと比喩表現が核心に触れ、聞き手に余白を残すのが魅力。旋律は歌詞のため息まじりの抑揚に寄り添い、フレーズ終止での細かなルバートやダイナミクスが情感を高める。
歴史的背景
本作はタンゴの黄金期(概ね1940年代前後)の情緒を色濃く反映する。ラジオとダンスホール文化が大衆音楽を牽引した時代、詩的で内省的なタンゴ・カンシオンが発展し、作曲家と詩人の協働が名曲を生んだ。StamponiとExpósitoはいずれもタンゴの洗練化に寄与し、感情の陰影と都市の詩情を高度に統合した。本曲もその潮流の中で、ダンス可能性と鑑賞性の両立を示す作品として位置づけられる。
有名な演奏・映画での使用
具体的な初演者や初録音、映画・ドラマでの使用情報は情報不明。ただし、タンゴの定番曲として多くの歌手・オルケスタが録音・演奏しており、コンサートやミロンガのレパートリーに定着している。編成は、歌とバンドネオンを核とした典型的なオルケスタ・ティピカから、ピアノとギターによる室内楽的な解釈まで幅広い。
現代における評価と影響
今日でも「FLOR DE LINO」は、歌詞の繊細な美と旋律の流麗さで支持され、プロ・アマ問わず再解釈が続く。ダンスの現場では中庸からやや遅めのテンポ感で、滑らかなリード&フォローを引き出す曲として好まれる。歌手は語るようなフレージングと明瞭なディクションが求められ、伴奏側は内声の織り込みと呼吸感によって詩の情景を支える。教育現場でも、タンゴの比喩表現やスペイン語の発音・リズム学習の題材として扱われることがある。
まとめ
「FLOR DE LINO」は、失恋の記憶と都市の孤独を“亜麻の花”の象徴で包み込む、タンゴ・カンシオンの精華。史実の細部は情報不明な点があるものの、時代を超えて歌い継がれ、踊り継がれる理由は、その控えめで深い詩情と、歌詞に寄り添う柔らかな旋律にある。入門者にも愛好家にも勧めたい名曲である。