MALA PINTA
- 作曲: DE CARO FRANCISCO,DE CARO JULIO

MALA PINTA - 楽譜サンプル
MALA PINTA |楽曲の特徴と歴史
基本情報
MALA PINTAは、アルゼンチン・タンゴを近代化した名匠ジュリオ・デ・カロとフランシスコ・デ・カロの共作による器楽曲である。ジャンルはタンゴ、歌詞付きの版は確認情報がなく、作詞者も情報不明。作曲年や初演・初録音の具体年は情報不明だが、デ・カロ兄弟の活動期(いわゆるグアルディア・ヌエバ期)に位置づけられる作品として認知される。演奏は一般に、バンドネオン、バイオリン群、ピアノ、コントラバスから成るオルケスタ・ティピカ編成で取り上げられることが多い。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲はデ・カロ楽派の語法を色濃く示す。洗練された和声進行、対位法的なパートの絡み、歌心に富むバイオリン旋律と、要所で切れ味を生むシンコペーションが共存する。ピアノ(フランシスコ)による流麗な分散和音や半音階的ボイシングが、弦やバンドネオンのフレーズを支え、前打音やアラス(アラスレ/アラステレ)に代表されるタンゴ特有の発音が推進力を生む。テンポは過度に急がず、フレーズ内に柔らかなルバートを許す解釈が好まれる一方、アンサンブル全体では明確な重心とリズムの切断を保つのが理想とされる。
歴史的背景
1920年代以降、ブエノスアイレスのタンゴは伝統的様式(グアルディア・ビエハ)から、和声・書法の面で飛躍したグアルディア・ヌエバへと展開した。その中心にいたのがジュリオ・デ・カロ楽団であり、フランシスコの作曲・ピアノとともに、室内楽的な精妙さをダンス音楽に持ち込んだ。MALA PINTAは、その美学のなかで生まれたレパートリーの一つで、サロンやラジオ、レコード文化の発展とともに広く浸透したと考えられるが、初演・初録音の正確な記録は情報不明である。
有名な演奏・録音
代表的な解釈としては、ジュリオ・デ・カロ楽団による録音が挙げられる。音盤の発売年やカタログ番号は情報不明だが、後年の編集盤・アンソロジーにも収録され、同楽団のレパートリーとして定着している。加えて、オルケスタ・ティピカ以外にも、室内楽的な小編成、ギター・デュオなどへの編曲例が見られる(具体的な編曲者・録音年は情報不明)。演奏においては、旋律のレガートと内声の対話、そしてシンコペーションの陰影をどう両立させるかが聴きどころとなる。
現代における評価と影響
MALA PINTAは、ダンス音楽としての躍動と、芸術音楽的な構築性を兼備するデ・カロ楽派の精神を示す一曲として、演奏家・研究者から高い評価を得ている。和声の拡張、対位法的書法、フレージングの柔軟性は、その後のモダン・タンゴに通じる言語を先取りしており、教育・レパートリーの場でも参照例となる。レパートリーの普及状況や特定の映画・ドラマでの使用情報は情報不明だが、コンサートや録音企画の文脈で継続的に取り上げられている。
まとめ
デ・カロ兄弟によるMALA PINTAは、タンゴを洗練させた時代の感性を結晶化した器楽曲である。豊かな和声、精緻なアンサンブル、抒情と推進力の両立が魅力で、録音史の詳細や作曲年は情報不明ながら、作品そのものの価値は揺るがない。まずはデ・カロ楽団の録音から聴き、各パートの会話とリズムの陰影を味わうのが最良の入門だ。