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MALENA

  • 作曲: DEMARE LUCIO
#タンゴ
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MALENA - 楽譜サンプル

MALENA|歌詞の意味と歴史

基本情報

「MALENA」は、アルゼンチンの作曲家ルシオ・デマーレが作曲し、詩人ホメロ・マンシが作詞したタンゴ・カンシオン。発表は1941年。スペイン語詞で、都会の憂愁を帯びた叙情性と、ピアノを基調とした気品ある和声運びが特徴。タンゴ黄金期のレパートリーとして、歌手とオルケスタ・ティピカの両方で親しまれている。

歌詞のテーマと意味

歌詞は“マレーナ”という女性歌手の声に宿る哀愁を描き、その声が生む記憶や孤独、街角の影を見つめる語り手の心象を映し出す。恋愛の告白というより、声そのものへの陶酔と畏敬が核であり、タンゴが抱える憧憬と痛みを象徴化。モデルの実在や特定人物との関係は諸説あるが、決定的証拠は情報不明として扱われる。

歴史的背景

40年代のブエノスアイレスはラジオと舞踏場が隆盛し、歌のタンゴが大衆文化の中心に。マンシの詩は文学的比喩で情景を凝縮し、デマーレはピアノ主体の繊細な和声と旋律で応答した。結果として、ダンス向けの躍動よりも、傾聴に耐える歌心を前面化した名作が生まれ、後続の“聴かせるタンゴ”の規範となった。

有名な演奏・映画での使用

初期には作曲者自身の楽団による録音が広く知られ、その後も数多の歌手・オルケスタがレパートリー化。テンポを落とし、歌詞を際立たせる解釈が定番で、ギター伴奏版や室内楽編成のアレンジも多い。映画での顕著な使用については情報不明だが、舞台公演やコンサートでの採用例は豊富である。

現代における評価と影響

今日でも国際的なタンゴ歌手が頻繁に取り上げ、レッスン教材としても引用される。ミロンガでは遅めの時間帯や聴取コーナーで選ばれることが多く、録音では歌の表情、間合い、ビブラートのコントロールが鑑賞の要点。詩と旋律の不可分さはシンガーソング系の解釈にも影響を与え続けている。

まとめ

「MALENA」は、声の美学を中心にタンゴの本質を照射する作品。華やぎより陰影、技巧より余韻で聴かせる構造が、時代と地域を超えて共感を呼ぶ。歌詞の全貌や初演事情に未詳点が残るとしても、その詩情と旋律の凝縮は揺るがず、名唱と名演が新たな聴き手を導き続けている。