LOS MAREADOS
- 作曲: COBIAN JUAN CARLOS

LOS MAREADOS - 楽譜サンプル
LOS MAREADOS |歌詞の意味と歴史
基本情報
『LOS MAREADOS』はアルゼンチンの作曲家Juan Carlos Cobian(フアン・カルロス・コビアン)によるタンゴ曲。タイトルは直訳すると「酔っぱらい/めまいの人々」を示し、都会の夜と酩酊の情景を核にした世界観で親しまれている。作詞者名や初演・初録音の詳細、初出年は情報不明だが、歌付きのタンゴとして広くレパートリー化し、器楽版でも頻繁に取り上げられてきた。濃密な哀愁と端正な旋律線が魅力で、ダンスの場だけでなく鑑賞向けのコンサートでも定番化している。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、失恋や別離の痛手を酒で紛らわす心理を軸に、酩酊の甘美さと空虚さを二重写しにする。乾いたユーモアや自己諧謔が散りばめられ、虚勢と脆さが交錯する独白が印象的だ。酒場のざわめき、夜の街灯、硝子のきらめきといった断片的イメージが、取り返しのつかない時間の流れを暗示し、感情の揺らぎを照らし出す。直接的な嘆きに流れず、含みのある台詞回しで余白をつくることで、聴き手は登場人物の心象を自ら補完できる。結果として、短い一夜の物語が普遍的な別れの寓話へと昇華されている。
歴史的背景
本作は、タンゴがダンス音楽から洗練された都会の歌へ成熟した時期の文脈で理解される。ピアノを中核にしたコビアンの洗練された和声感とメロディは、サロンからキャバレーまで当時の都市文化に適合し、寂寥と官能のバランスを生んだ。出版年や初演者、初のヒット録音など具体的史実は情報不明だが、タンゴ黄金期に培われた歌唱様式とオーケストラ編成の発展が、本作の普及と長寿命化に寄与したことは作品の受容史からもうかがえる。
有名な演奏・映画での使用
演奏面では、ロベルト・ゴジェネチェやスサナ・リナルディら名歌手が印象的な解釈を残し、アストル・ピアソラによる編曲・共演でも知られる。編成を問わず映えるため、歌伴オルケスタから小編成、ソロ楽器の編曲まで録音は多岐にわたる。一方、特定の映画やドラマでの使用例については情報不明。ステージでは、ミロンガのレパートリーや劇場型タンゴ公演で取り上げられることが多く、歌詞のドラマ性が舞台演出とも相性が良い。
現代における評価と影響
今日でも『LOS MAREADOS』は、タンゴ歌手の必修曲とされることが多く、器楽家にもアレンジ素材として人気が高い。歌詞の物語性と旋律の歌いやすさが共存しており、コンサート、クラブ、レッスン発表会など多様な場で生きる。ジャズやクラシック方面の奏者が取り上げる事例もみられるが、特定の受賞歴やチャート成績などの数値的評価は情報不明。それでも、時代や国境を越えてレパートリーに残り続けること自体が、作品価値の確かな指標となっている。
まとめ
酩酊をモチーフに別れの痛みを描く『LOS MAREADOS』は、コビアンの気品ある和声と哀愁の旋律が光るタンゴの名曲である。作詞者や初演年など一部は情報不明ながら、数多の名歌手・名手が解釈を重ね、歌でも器楽でも深い陰影を与え続ける。都市の夜を背景にした普遍的な感情のドラマは、聴くたびに新たな余韻を残し、現代のステージでも強い存在感を放っている。