NARANJO EN FLOR
- 作曲: EXPOSITO VIRGILIO HUGO

NARANJO EN FLOR - 楽譜サンプル
NARANJO EN FLOR |楽曲の特徴と歴史
基本情報
アルゼンチン・タンゴ「NARANJO EN FLOR」は、作曲家Virgilio Hugo Expósitoによる楽曲で、作詞はHomero Expósito。発表年は情報不明。タイトルは「橙の花」の意で、スペイン語圏で広く親しまれ、歌ものとして多数録音が残る標準曲である。恋と喪失、記憶と香りを結ぶ象徴性の高い題材が、タンゴ特有の叙情と結びつき、長年レパートリーの中心に位置している。
音楽的特徴と演奏スタイル
音楽的には、歌を中心に据えたタンゴ・カンシオンの典型。穏やかな中庸テンポに、バンドネオンとピアノが繊細なシンコペーションで寄り添い、カンタービレな旋律を支える。語り口のようなルバートや間の取り方が解釈の鍵で、終止へ向けて情感を高めるダイナミクスが効果的。器楽版でも、息の長いフレーズと陰影のある和声進行が生き、ギターや弦楽による室内楽的アプローチも映える。
歴史的背景
制作背景は、タンゴの黄金期にあたる20世紀中葉のブエノスアイレス。Expósito兄弟は洗練された言葉と都会的ハーモニーで評価を確立し、本作もラジオや舞踏の場から広まった。ダンス音楽としての機能を保ちつつ、内面を見つめる詩情をもつ“聴かせるタンゴ”が求められた時代潮流と響き合い、サロンとコンサート双方で受容の幅を広げた。
有名な演奏・録音
有名録音としては、ロベルト・ゴジェネチェの深い解釈がよく知られる。ほかにスサナ・リナルディ、アドリアナ・バレーラら歌手による名唱があり、編成面でもバンドネオン主導のオルケスタからギター・デュオ、ピアノ独奏に至るまで多彩。歌詞の陰影を重視する語り口と、節度あるテンポ設計が評価され、ライブでも録音でも定番として取り上げられている。
現代における評価と影響
今日では、ミロンガやコンサート、音楽教育の場でも定番曲として扱われ、若手からベテランまで再解釈が途切れない。スペイン語のディクションとフレージング、タンゴのシンコペーションやマルカートの扱いを学ぶ教材として有用で、歌唱・器楽の双方において表現力を鍛える格好のレパートリーとみなされている。国際的公演でも頻繁に登場する。
まとめ
「NARANJO EN FLOR」は、香り立つ言葉と旋律の親密さが光るタンゴの古典。作曲者Virgilio Hugo Expósitoと作詞者Homero Expósitoの協働が、普遍的な叙情を生み出し、時代や国境を越えて歌い継がれてきた。発表年は情報不明ながら、その価値は揺るがず、今後も多様な解釈と録音が重ねられていくだろう。