NOSTALGIAS
- 作曲: COBIAN JUAN CARLOS

NOSTALGIAS - 楽譜サンプル
NOSTALGIAS|歌詞の意味と歴史
基本情報
『NOSTALGIAS』は、アルゼンチンの作曲家フアン・カルロス・コビアン作曲、エンリケ・カディカモ作詞のタンゴ。初出は1936年とされる。原題が示す通り“郷愁”を主題にしたスペイン語の歌曲で、端正で哀愁を帯びた旋律と都会的な和声が魅力。現在もミロンガやコンサートで愛奏される定番だ。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、過去の恋を忘れられない語り手が酒にすがり記憶を鎮めようとする心情を描く。失われた笑顔や夜の街の匂いなど感覚記憶が、現在の孤独と対比され、強い映像性を生む。単なる失恋譚にとどまらず、時間との和解を模索する物語でもあり、タンゴ特有のルンファルド語彙を交えた詩的表現が音楽の緊張感を高めている。
歴史的背景
1930年代のブエノスアイレスはタンゴ黄金期。ピアニストのコビアンは〈ガルディア・ヌエバ〉の旗手として、洗練された旋律線と近代和声を導入し、サロン志向の美学を確立した。カディカモは同時代を代表する詩人で、都市の憂愁を巧みに掬い上げる作詞で知られる。両者の協働により、本作は気品と激情を併せ持つ名歌となった。
有名な演奏・映画での使用
録音史でも本作は重要で、フリオ・ソーサ、ロベルト・ゴジェネチェ、スサナ・リナルディ、アドリアナ・バレーラらの名唱は定番として親しまれる。オーケストラによる器楽版も多く、ダンス向けからコンサート用アレンジまで幅広い。映画やドラマでの具体的使用例は情報不明だが、タンゴを象徴する楽曲として選ばれる機会は多い。
現代における評価と影響
今日でも歌手やギタリスト、バンドネオン奏者の必修レパートリーで、音域とフレージング、言葉の間合いが試される“歌い手の歌”として尊重される。国際的なタンゴ・フェスや教育現場でも題材となり、スペイン語圏外のアーティストによる翻案・訳詞での演唱も少なくない。
まとめ
『NOSTALGIAS』は、都市の孤独と記憶を結晶化したタンゴの到達点。コビアンの品格ある書法とカディカモの詩情が結び、時代を超えて共感を呼び続ける。初めて聴くなら、上記の名唱から入るのがおすすめだ。