OBLIVIÓN
- 作曲: PIAZZOLLA ASTOR PANTALEON
#タンゴ

OBLIVIÓN - 楽譜サンプル
OBLIVIÓN|楽曲の特徴と歴史
基本情報
アストル・ピアソラ作曲「OBLIVIÓN(オブリヴィオン)」は、ヌエボ・タンゴを象徴する器楽曲。題名は“忘却”。代表的編成はバンドネオン+弦、または独奏ヴァイオリン/チェロと弦。演奏時間は約3〜5分。1984年の伊映画『エンリコ四世』で用いられ国際的に広まった。
音楽的特徴と演奏スタイル
弱拍に重心を置くシンコペーション上で長いレガート旋律が漂う。半音階やため息の装飾が哀感を深め、短調系の和声はサスペンションで陰影を作る。テンポはゆるやか、ルバート多用。弦の対旋律とバンドネオンの呼吸感が肝要。
歴史的背景
ピアソラはタンゴにジャズや現代音楽を導入し“ヌエボ・タンゴ”を確立。「OBLIVIÓN」はその成熟期の作。映画『エンリコ四世』(監督:マルコ・ベロッキオ)での使用を機に欧米へ広がり、コンサート・レパートリーとして定着した。
有名な演奏・録音
録音は多彩。作曲者自身の各アンサンブル版に加え、ギドン・クレーメル(Vn)と弦、ヨーヨー・マ(Vc)版、イ・ソリスティ・イタリアーニの合奏、アコーディオンのリシャール・ガリアーノなどが著名。いずれも“歌”と間合いが核。
現代における評価と影響
いまやタンゴのみならず、クラシックやジャズ、吹奏楽・室内楽まで編曲が普及。発表会やコンクールの定番として親しまれる。素材は簡潔だが解釈の幅が広く、フレージングと音色設計が表現を決める。映像作品での採用例も多い。
まとめ
凝縮された叙情と洗練された語法を併せ持つ名曲。技巧よりも音の間合いと陰影が要となり、編成を問わず高い表現力を引き出す。映画での成功を足掛かりに世界標準となり、ピアソラ美学の精華として聴き継がれている。