EL ONCE
- 作曲: FRESEDO OSVALDO NICOLAS

EL ONCE - 楽譜サンプル
EL ONCE|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「EL ONCE」は、アルゼンチンの作曲家オスバルド・フレセド(Osvaldo Nicolás Fresedo)による器楽曲。ジャンルはタンゴ。歌詞の有無は確認されておらず、一般にはインストゥルメンタルとして演奏される。初出年や初録音の詳細は情報不明。標準的なタンゴ編成(バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバスなど)で取り上げられる。
音楽的特徴と演奏スタイル
フレセド楽団に典型的な、洗練されたレガート主体の歌心と、控えめでエレガントなリズム運びが核となる。マルカートの低音とシンコパの掛け合い、バンドネオンと弦の対話、ピアノの装飾的アルペジオが要所を彩る。中庸のテンポで、A–B型の主題配置とバリエーション、端正なコーダへ収束する構成が一般的に聴かれる。ダンス可能な推進力を保ちつつ、過度な強打を避けたサロン志向の音色設計が魅力である。
歴史的背景
フレセドは20世紀前半のブエノスアイレスで活躍し、ガルディア・ビエハから黄金期へと至る過程で、都会的でサロン向きの美学を確立した作曲家・楽団指揮者である。「EL ONCE」はそのレパートリーの一曲として広く知られるが、作曲年や初演の場、題名の由来は情報不明。彼の端麗なサウンドは、タンゴをダンス音楽としてだけでなく鑑賞音楽としても国際的に浸透させる一翼を担った。
有名な演奏・録音
代表的にはオスバルド・フレセド楽団による録音が参照される。時期やレーベル、盤番号などの細目は情報不明だが、アーカイブされたSP音源や後年の復刻編集盤、主要ストリーミングで複数のバージョンを聴くことができる場合がある。各録音では、編成の違いや録音年代によって音色の重心、テンポ感、リズムの押し引きが変わり、曲の性格に微妙な差異が生まれる点が聴きどころだ。
現代における評価と影響
今日でもフレセド作品は、端正でメロディアスなタンゴの手本として研究・鑑賞の対象になっている。「EL ONCE」もその特質を示す一例で、アレンジや録音技法の比較検討、ダンスの実践におけるフレージング分析などで取り上げられることがある。明確な映画使用や著名アーティストによる大規模な再解釈の事例は情報不明だが、作品を通じてフレセド流の洗練された表現が再評価されている。
まとめ
「EL ONCE」は、躍動よりも気品と節度を重んじるフレセド流タンゴの魅力を伝える器楽曲である。詳細な成立事情は情報不明ながら、均整のとれた主題運び、柔らかなアンサンブル、控えめで美しい装飾が聴き手を引き込み、タンゴの多様な表情を知る格好の入口となる。入門者には全体構成やリズムの呼吸を、愛好家には録音ごとの解釈差を味わう聴取を勧めたい。