RECUERDO
- 作曲: PUGLIESE OSVALDO

RECUERDO - 楽譜サンプル
RECUERDO|楽曲の特徴と歴史
基本情報
RECUERDO(レクエルド)は、アルゼンチンの作曲家・ピアニスト、オスバルド・プグリエーセによるタンゴの名曲。作曲年は1924年。主に器楽曲として演奏され、オルケスタ・ティピカ(バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバス)編成で親しまれる。ミロンガ(タンゴ舞踏会)でも定番として定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
力強いマルカートと静と動の鮮烈な対比が核。主旋律のバンドネオンに、ピアノの鋭いアタックと内声の対旋律が絡み、緊張と解放を生む。中間部は抒情的で、和声は濃密ながら明瞭。微細なルバートと呼吸で間合いを作る解釈が要点で、アクセント配置やダイナミクスの起伏、フレーズの切り返しがダンサーのステップを導く。アンサンブルでは内声の鮮明さと低音の支えが重要となる。
歴史的背景
1920年代のブエノスアイレスでは、洗練された編曲と新たな表現を志向する潮流が強まり、いわゆる“デ・カロ学派”が台頭した。若きプグリエーセの初期代表作である本作もその文脈で注目を集め、ラジオ放送とレコード流通の拡大とともに広く普及。舞踊の要請に応えつつ芸術的完成度を高めた書法は、後続のオルケスタに大きな影響を与えた。
有名な演奏・録音
本作は多くのオルケスタが録音しており、代表例としてフリオ・デ・カロ楽団、オスバルド・プグリエーセ楽団、アニバル・トロイロ楽団の演奏が知られる。各陣営はテンポ設計、アクセントの置き方、クレッシェンドのかけ方に解釈差があり、同曲ながら異なる劇性を提示。聴き比べることで、編成バランスやピアノの役割、バンドネオンの音色設計の違いが明瞭に見えてくる。
現代における評価と影響
今日も演奏家・編曲家にとって重要な学習曲で、アンサンブル精度、リズムの呼吸、音色の統御を試す指標とされる。ダンサーからはドラマ性と間合いの豊かさが支持され、コンサートからミロンガまで“近代タンゴの礎”として演奏が続く。教育現場では内声処理とダイナミクス設計の教材として参照され、現代オルケスタによる再解釈や室内楽編も盛んである。
まとめ
RECUERDOは、構築的な書法と感情の起伏を併せ持つプグリエーセの中核作。強靭なビートと抒情性が共存し、舞台とダンスフロアの双方で光る普遍性を備える。多彩な解釈に耐える懐の深さゆえ、今後もタンゴ・レパートリーの中心で鳴り続けるだろう。