SUR
- 作曲: TROILO ANIBAL CARMELO
#タンゴ

SUR - 楽譜サンプル
SUR|歌詞の意味と歴史
基本情報
「SUR」は、アルゼンチンの名バンドネオン奏者アニバル・トロイロ作曲、詩人オメロ・マンシ作詞のタンゴ歌曲。初録音は1948年、トロイロ楽団の歌手エドムンド・リベーロ版が著名。題名は「南」を指し、ブエノスアイレス南部の風景と記憶を軸に個の物語を描く。
歌詞のテーマと意味
歌詞はボエドやポンペジャ(Pompeya)などの地名を呼び、去りゆく恋と若き日への郷愁を編む。具体的な街の手触りが、別れの痛みや時の不可逆性を照らし出す。都市景観が記憶の地図となり、私的喪失と地域の時間が重なり合う構図が核心である。
歴史的背景
制作はタンゴ黄金期後期。ラジオと舞踏が全盛の中、トロイロの抒情的旋律とマンシの映像的言葉が結びついた。戦後の都市拡張で変貌する街に対し、下町の記憶を詩情高く定着させた点が画期的。歌のための間と呼吸を重んじる書法が要だ。
有名な演奏・映画での使用
代表録音は1948年のトロイロ楽団(歌:エドムンド・リベーロ)。ロベルト・ゴジェネチェの深い語り口、スサナ・リナルディの演劇的表現も名唱として知られる。器楽版も多く、テンポや間合いの差異が解釈の肝。映画での使用情報は情報不明。
現代における評価と影響
今日「SUR」はタンゴ詩の頂点級として広く尊重され、文学・都市文化の文脈でもしばしば参照される。世界の歌手が取り上げ、語りと沈黙の配分、ダイナミクスの彫塑が鑑賞の要。地名喚起の力が聴き手の記憶と共鳴し続ける。
まとめ
南の街並みと私的記憶を重ねた結晶的名曲。まずは1948年盤を基軸に複数の解釈を聴き比べ、言葉と間が生むドラマを味わおう。