TODA MI VIDA
- 作曲: TROILO ANIBAL CARMELO

TODA MI VIDA - 楽譜サンプル
TODA MI VIDA|歌詞の意味と歴史
基本情報
「TODA MI VIDA」は、アニバル・トロイロ(Aníbal Carmelo Troilo)作曲、作詞はJosé María Contursiによるアルゼンチン・タンゴの曲。制作年は情報不明。哀愁を湛えた旋律と、歌い手の呼吸を生かす間合いが魅力で、オルケスタ・ティピカから小編成まで幅広く演奏されるレパートリーとして知られる。バンドネオンの陰影と、和声の柔らかな推移が言葉の抑揚を支え、聴き手に濃密な物語性を感じさせる。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、一生を通じて消えない愛の記憶を語る一人称のモノローグ。別離の痛み、時の経過への嘆き、取り戻せない日々への悔恨が核を成し、強い執着と優雅な諦念が交錯する。比喩は日常の風景や夜の静けさに寄り添い、感情の起伏は短いフレーズの反復で高められる。メロディはその心理の波を受け止め、ための効いたフレージングで言葉の輪郭を浮かび上がらせる。舞曲でありながら、聴取に耐える抒情詩としての強度を備えたテキストが特徴だ。
歴史的背景
トロイロが活動した1930〜40年代のブエノスアイレスは、ラジオと舞踏会場が牽引したタンゴ黄金期。彼はオルケスタ・ティピカの名指揮者・バンドネオン奏者として、都会的で濃密な歌心を提示した。コントルシの繊細な心理描写は当時の詩的潮流を代表し、本作もその美学を体現する。発表年や初録音の詳細は情報不明だが、黄金期のタンゴ語法—レガート主体の歌伴、内声の滑らかな声部進行—が色濃く刻まれている。
有名な演奏・映画での使用
アニバル・トロイロ楽団による録音は基準的解釈として広く参照され、その後も多くの歌手・楽団がレパートリーに採り入れてきた。テンポや編成は演者により差があり、器楽版でも歌の呼吸を残す解釈が主流である。劇的なルバートを伴う歌唱と、ダンスに適した流麗なビート重視の演奏の双方が存在し、場面に応じて使い分けられる。映画やテレビでの具体的な使用例は情報不明。
現代における評価と影響
本作は歌詞付きタンゴの定番として、コンサートやミロンガでも継続的に演奏される。歌手は語りのニュアンスと沈黙の扱いを競い、バンドネオン奏者はレガートとルバートで言葉の陰影を補う教材として重視する。編曲の自由度が高く、ピアノ独奏から室内編成、フル・オルケスタまで適応可能で、世代や国境を越えて愛唱される持続力が普遍性を裏付けている。
まとめ
「TODA MI VIDA」は、忘れ得ぬ愛を静かに凝視するタンゴの精髄。トロイロの旋律とコントルシの詞が織りなす内省性は、今日も新たな解釈を生み続ける。制作年や映像作品での使用の詳細は情報不明ながら、歌と演奏の相互作用が高い完成度で結晶し、レパートリーにおける重要性は揺るぎない。