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VOLVER

  • 作曲: GARDEL CARLOS
#タンゴ
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VOLVER - 楽譜サンプル

VOLVER|歌詞の意味と歴史

基本情報

「VOLVER」は、アルゼンチンの歌手・作曲家カルロス・ガルデルが手がけたタンゴ(タンゴ・カンシオン)。作詞はアルフレード・レ・ペラ。原語はスペイン語で、哀愁と回想を主題に据えた歌唱曲として広く親しまれている。発表年は資料により異同が見られ、正確な初出年は情報不明。ガルデルの代表作群の一つとして、録音・映像・舞台の各領域で継続的に演奏される国際的レパートリーである。

歌詞のテーマと意味

歌詞は「帰る」ことを核に、時間の経過と記憶の揺らぎ、故郷や過去の自分へのまなざしを重層的に描く。栄光と挫折、憧憬と不安が交錯し、帰郷の歓びに潜む逡巡までを繊細に表現。象徴的なフレーズで、流れ去った歳月の軽さと重さを同時に示し、人が誰しも抱える回想の痛みと救いを浮かび上がらせる。恋愛の歌であると同時に、人生における「出発と回帰」の普遍的ドラマを語る点が、長く支持される理由だ。

歴史的背景

1930年代、タンゴはラジオやレコード、トーキー映画を通じ世界へ拡大。ガルデルはレ・ペラとの協働で数々の名曲を残し、歌うタンゴの美学を確立した。本作もその黄金期に生まれ、洗練された旋律線と語り口が、当時の都市文化と移民社会の感情を代弁。のちにガルデルは不慮の事故で世を去るが、その短い活動期間に凝縮された作品群の中で「VOLVER」は特に象徴的な位置を占める。

有名な演奏・映画での使用

オリジナルのガルデル録音はもちろん、ロベルト・ゴジェネチェやフリオ・イグレシアス、カエターノ・ヴェローゾらが印象的なカバーを残している。映画ではペドロ・アルモドバル監督『Volver』(2006)で使用され、作中歌はエストレージャ・モレンテが歌唱(劇中では俳優が口パクで表現)。ガルデルの出演映画でも披露された事実が広く知られ、スクリーンを通して曲の知名度は決定的なものとなった。

現代における評価と影響

「VOLVER」はタンゴ歌唱のスタンダード中のスタンダードとして、コンサート、レコーディング、音楽教育で頻繁に扱われる。スペイン語圏では、歌の有名な表現が日常的引用句として生き続け、ノスタルジアを語る文化的コードにもなっている。クラシックやワールド系のアレンジ、ギターやピアノの室内楽的設定でも親しまれ、国境・ジャンルを越えた普遍性が再評価されている。

まとめ

帰郷と記憶をめぐる普遍的主題を、簡潔な旋律と語り口で統合した「VOLVER」。ガルデル=レ・ペラ期の粋を示すこの曲は、世代と地域を超えて歌い継がれ、映像や舞台でも力を発揮し続ける。タンゴ入門にも、名唱の聴き比べにも最適の一曲だ。