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Litha
- 作曲: COREA CHICK

Litha - 楽譜サンプル
Litha|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Lithaはチック・コリア(Chick Corea)作曲のインストゥルメンタル楽曲。初出はリーダー作「Tones for Joan's Bones」(Atlantic、1968年発売。録音は1966年)で、同作を代表するオリジナルの一つとして知られます。初演時の編成はピアノ、トランペット、サックス、ベース、ドラムのクインテット。参加メンバーはウディ・ショウ(tp)、ジョー・ファレル(sax)、スティーヴ・スワロー(b)、ジョー・チェンバース(ds)で、コリアの端正でありながら大胆なピアノと、鋭いホーンのコントラストが際立ちます。歌詞は存在せず、作詞者は情報不明です。
音楽的特徴と演奏スタイル
Lithaは明快な主題と現代的な和声語法を併せ持つポスト・バップ系の書法が核にあります。ホーンのユニゾン/ハーモニーで主題を提示し、続くソロではモチーフ展開と相互作用を重視。ピアノは和声の拡張や分散和音を駆使し、リズム・セクションはシンコペーションに富む推進力で応答します。モーダルな停留感と機動的なコード進行が交差し、即興では各奏者が明確なダイナミクスとフレージングで緊張と解放を描きます。録音ごとにテンポ感やアーティキュレーションは変化するものの、緻密で反応の早いインタープレイが聴きどころです。
歴史的背景
1960年代半ばのニューヨークで頭角を現したコリアは、ブルー・ミッチェルやスタン・ゲッツのバンドで経験を積み、やがてマイルス・デイヴィス参加へと繋がる創作期にありました。Lithaはその過程で生まれた初期代表作の一つで、ハード・バップからモーダルへ架橋する当時の潮流の中、作曲と即興のバランスを先鋭化。スタジオ作品としての構築性と、ライブ志向の自発性が同居し、のちのコリア作品群に通じる語法を早くも提示しています。
有名な演奏・録音
必聴はオリジナル収録の「Tones for Joan's Bones」。さらにスタン・ゲッツの名盤「Sweet Rain」(Verve、1967年)でもLithaが取り上げられ、ピアノはコリア本人、リズム隊にロン・カーター(b)とグラディ・テイト(ds)を配した端正で詩情ある演奏が聴けます。加えて、Atlantic期の編集盤「Inner Space」(1973年)にも同セッション音源が収録され、入手経路として知られてきました。これらの音源でアンサンブルと即興の両面を比較すると、作品の多面性がより明確になります。
現代における評価と影響
Lithaは「Spain」などの超定番に比べ知名度は控えめながら、コリア初期の作曲美学を示す教材的価値が高い楽曲として、研究やリサイタルで継続的に参照されています。ホーン・ラインの明晰さ、和声設計、リズムの扱いは編曲やアドリブ研究の好素材であり、ピアニストのみならず管楽器奏者にも学習効果が大きいレパートリーです。主要ストリーミングや再発盤でアクセスしやすく、現代のジャズ学習環境でも位置づけは揺るぎません。
まとめ
Lithaはチック・コリアの初期創作を象徴するインスト曲で、鮮烈なテーマと現代的和声、反応的なインタープレイが魅力です。まずは「Tones for Joan's Bones」とスタン・ゲッツ「Sweet Rain」の二つを聴き比べ、構成やテンポ感、ソロのアプローチの違いを体感すると理解が深まります。演奏家にはフレーズの明度とダイナミクス設計、聴き手にはアンサンブルの呼吸に注目する鑑賞を推奨します。