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The Look Of Love
- 作曲: BACHARACH BURT F, DAVID HAL

The Look Of Love - 楽譜サンプル
The Look Of Love|歌詞の意味と歴史
基本情報
バート・バカラック(作曲)とハル・デヴィッド(作詞)による「The Look Of Love」は、1967年公開の映画『カジノ・ロワイヤル』のために書かれ、ダスティ・スプリングフィールドの艶やかな歌唱で初披露された。洗練されたコード進行とボサノバのフィールを融合したポップ・バラードで、のちに多数のアーティストに取り上げられた。アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされ、二人の代表作として広く知られる。
歌詞のテーマと意味
曲名が示す“まなざし”は、恋の始まりに漂う官能と確信の瞬間を象徴する。歌詞は、相手の視線から読み取れる愛情の確かさ、触れ合いへの期待、静かな高揚を丁寧に描く。大げさな告白ではなく、呼吸やささやき、距離の近さといった身体感覚の比喩で親密さを表し、メロディとハーモニーの柔らかい揺れがその心理描写を支える。露骨さを避けながらロマンティックで成熟した愛を語る点が、時代を超えて共感を呼ぶ。
歴史的背景
1960年代後半、アメリカン・ポップはジャズやラテンの語法を吸収し、アレンジの洗練が進んだ。バカラックは不規則なフレーズ、繊細なリハーモナイズ、躍動するリズムを駆使して映画音楽にもポピュラーにも通じる楽曲を書き、デヴィッドは平易な言葉で成熟した恋愛感情を描いた。本作はその結晶で、映画サウンドトラックから生まれながら、単独のポップ・ソングとしても強い存在感を確立した。
有名な演奏・映画での使用
初演版のダスティ・スプリングフィールドに加え、Sérgio Mendes & Brasil ’66のカバーが世界的に知られる。後年では、ジャズ畑からダイアナ・クラールが取り上げ、そのラグジュアリーなオーケストレーションで新たな定番となった。原曲は映画『カジノ・ロワイヤル』(1967年)で使用。以後も多数のアーティストによって録音され、コンサートの定番曲として親しまれている。
現代における評価と影響
ボサノバ的グルーヴとポップの普遍性を兼ね備えた本作は、ジャズ・ポップのスタンダードとして教育現場やレパートリー集でも頻繁に扱われる。転調やブリッジの巧みさ、休符の置き方など作曲技法の教材としても参照され、ヴォーカル解釈の余地が大きいことから世代を超えたカバーを生み出してきた。結果として、映画発のヒットでありながら、作家性と大衆性が高次で交差した“歌い継がれるポップ”の典型と評価されている。
まとめ
「The Look Of Love」は、視線という繊細なテーマを洗練のハーモニーに乗せ、時代を超えて響くロマンティックな名曲である。映画由来の強い印象と、ポップ・ソングとしての完成度の高さ、そして多彩な名演がその価値を押し上げ、今日もなお新たな解釈を呼び込んでいる。