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Misterioso

  • 作曲: MONK THELONIOUS S
#スタンダードジャズ
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Misterioso - 楽譜サンプル

Misterioso|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Misterioso(ミステリオーソ)は、セロニアス・モンクによる代表的なジャズ・スタンダード。初出は1948年の録音とされ、ブルーノート期の重要曲に数えられる。形式は12小節のブルースで、タイトルはイタリア語で「神秘的に」を意味する。モンクの作曲語法を象徴する簡潔で謎めいた主題、強い間(スペース)の活用、比類ないリズム処理が核となる。原曲はインストゥルメンタルであり、公式な歌詞情報は情報不明。セッションやライブで頻繁に取り上げられ、学習曲としても定番化している。

音楽的特徴と演奏スタイル

最大の特徴は、並行6度で動く階段状の主題。音域を控えめに保ちながら半音階的な香りをにじませ、素朴さと抽象性を同居させる。フォームは12小節ブルースだが、モンクらしい和声の捻りや、意図的な間によって独自の緊張感が生まれる。ピアノのコンピングは鋭いシンコペーションと間の対比が要で、ソロはモチーフの反復・変形、アクセントのずらしで構築される。テンポは中庸が好まれ、メロディのレイドバックとドライヴ感のバランスが鍵。テナーサックスやヴィブラフォンなど様々な編成でも映える。

歴史的背景

1940年代後半、ビバップの深化と並行して、モンクはブルース形式に前衛性を宿す数々の楽曲を発表した。Misteriosoはその代表例で、単純な素材から強烈な個性を引き出す手腕を示す。1948年の録音は、のちのライブ・レパートリー化の起点となり、1950年代後半にはクラブ・シーンで頻繁に演奏。モンク作品の中でも特に“テーマと余白”の構図が際立ち、後続の即興家に新たなアプローチを促した。

有名な演奏・録音

初期の決定的な記録として、1948年のブルーノート録音が挙げられる。さらに1958年、ニューヨークのファイヴ・スポットでのライブ演奏を収めたアルバム「Misterioso」(Riverside)は、同曲の魅力を広く知らしめた重要作。スタジオ版の凝縮感と、ライブでの伸びやかなインタープレイを聴き比べることで、テーマの簡潔さが即興に与える自由度を体感できる。他にも多くのジャズ奏者がレパートリーとして取り上げ、録音は多数に及ぶ。

現代における評価と影響

Misteriosoは、ブルース形式の器楽曲として教育現場やジャム・セッションで重宝される一方、モンク的美学—余白、非対称性、モチーフ思考—の入門曲としても評価される。シンプルな主題が演奏者の個性を強く反映させるため、世代や楽器を超えて解釈が更新され続けている。現代のピアニストのみならず、サックス奏者やヴィブラフォン奏者にとっても即興の教科書的存在となり、録音・公演の現場で確固たる地位を保っている。

まとめ

Misteriosoは、12小節ブルースという普遍的枠組みに、モンク独自の間合いと和声感を刻印した名曲である。1948年の初期録音から1958年のライブ名演まで、歴史的な重要テイクが曲の魅力を多面的に示してきた。簡潔なテーマは演奏者の創造性を引き出し、今日もスタンダードとして生き続ける。歌詞情報は情報不明だが、インストゥルメンタルゆえの抽象性が、タイトルどおり“神秘的”な余韻を生む。