Till The Clouds Roll By
- 作曲: KERN JEROME

Till The Clouds Roll By - 楽譜サンプル
Till The Clouds Roll By|歌詞の意味と歴史
基本情報
Till The Clouds Roll Byは、アメリカ近代ミュージカルを切り拓いた作曲家ジェローム・カーンの楽曲。作詞はP. G. Wodehouse、1917年に初出とされ、ブロードウェイの流れを汲むショー・チューンとして知られます。端正で覚えやすい旋律線と、穏やかな調性運びが特徴で、のちのアメリカン・ソングブックの語法にも通じる普遍性を備えています。録音や版の違いにより細部の解釈は揺れますが、歌唱にも器楽編にも馴染む柔軟性が評価されています。
歌詞のテーマと意味
タイトルが示す通り、雲が流れ去るまで希望を持って待つという、逆境下の楽観と忍耐が中心的なモチーフです。暗さに沈まず、必ず訪れる晴れ間を信じる心の姿勢を、軽やかな比喩とリズム感で描写。慰撫的で前向きなメッセージは、私的な恋愛場面にも広い人生一般にも重ねて解釈できる懐の深さを持ちます。なお、歌詞の全文や詳細なバリアント間の差異はここでは扱わず、版ごとの差分は情報不明とします。
歴史的背景
1910年代、カーンは台本作家のガイ・ボルトン、作詞家P. G. Wodehouseらとともに、小規模劇場で筋立てと音楽を緊密に結び付けた新機軸のミュージカルを打ち出しました。本曲が生まれた1917年は、ブロードウェイの様式が洗練されていく過渡期。過度に装飾的なレビューから、物語性と音楽が一体化する方向へ舵を切る中で、平明かつ情感豊かな旋律が支持を集め、後世の作曲家にも影響を与えました。
有名な演奏・映画での使用
本曲はカーン作品集のコンサートやリサイタル、スタンダード集で取り上げられることがあり、ピアノと歌、あるいは小編成ジャズ・コンボでも演奏可能な汎用性を持ちます。1946年にはMGMの伝記映画『Till the Clouds Roll By』が公開され、タイトル面でも本曲と強い結び付きが知られます。ただし、当該映画内での本曲の具体的な使用状況や代表的録音の網羅的リストは情報不明です。
現代における評価と影響
今日では、アメリカン・ソングブック系のレパートリーを探る際に触れられる機会があり、教育現場でも20世紀前半の作曲語法を学ぶ素材として参照されます。AABA型に親和的なフレージングや、過度に技巧へ走らない旋律造形は、歌手にとって表情付けの余白が大きく、編曲家にとっても転調や再ハーモナイズの余地を与えます。華美ではないが滋味深い、カーンらしい職人技の一篇と評価されています。
まとめ
Till The Clouds Roll Byは、ジェローム・カーンの美点—端正な旋律、控えめな和声、物語性のあるテキスト—が凝縮された楽曲です。1917年という転換期に生まれ、楽観と忍耐のメッセージで長く歌い継がれてきました。映画タイトルとしても記憶され、演奏形態を問わず生きる普遍性を備える点が、現在まで続く価値の源泉だと言えるでしょう。