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Monk's Mood

  • 作曲: MONK THELONIOUS S
#スタンダードジャズ
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Monk's Mood - 楽譜サンプル

Monk's Mood|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Monk's Mood は、セロニアス・モンク(表記:MONK THELONIOUS S)によるジャズ・バラード。歌詞は存在せずインストゥルメンタル作品として認知されている。タイトルが示す通り、モンクの内省的な「ムード」を凝縮した代表曲のひとつで、後年に至るまで多くの演奏家に取り上げられてきた。初出年・初演の詳細は情報不明だが、モダン・ジャズの文脈で長く演奏され、モンク作品の中でも抒情性と個性の両立で特に評価が高い。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポはきわめて緩やかなバラード。自由なテンポの序奏(ルバート)で和声的な気配を描き、テーマに入ると凝縮されたメロディが慎重に歌い上げられる。モンクらしい全音階的な色彩、クロマティックな内声進行、意外性のある終止の置き方が特徴で、和声は濃密ながら空白(間)の使い方が巧み。ピアノは硬質なアタックと濁りを恐れないヴォイシングで独自の陰影を作り、共演者には音数を絞った対話的アプローチが求められる。ソロは過度に技巧を誇示せず、旋律の抑揚と沈黙の緊張感で深い表情を生む演奏が多い。

歴史的背景

モンクがビ・バップ以後の語法を自らの作曲美学に昇華した時期の産物で、従来のスタンダードの情緒と、当時最前線の和声感覚を橋渡しする位置づけにある。ブルーノート期の録音に端緒があるとされ、以後もたびたび再録音されることでレパートリーとして定着した。1950年代後半にはモンクの評価が高まり、クラブからコンサートホールへと活動の場が拡張。静謐なバラードである本曲は、その芸術的側面を伝える象徴曲として機能した。詳細年代や初出の正確なクレジットは情報不明。

有名な演奏・録音

モンク自身による複数のスタジオ/ライヴ録音が基準となるが、特に1957年のジョン・コルトレーンとの共演で知られる。ふたりの緊張感ある間合いと、テーマへの敬虔なアプローチは本曲の解釈における指標となった。また、後年発掘された同時期のライヴ音源でも本曲は重要な位置を占め、モンクのピアノが持つ沈黙と余韻の美学が鮮明に記録されている。さらに多くのピアニストやサックス奏者がコンサートの序盤や終盤に配置し、静謐な気配づくりに用いる例が多い。

現代における評価と影響

Monk's Mood は、モンク作品の中でも“歌心の極致”として教育現場やワークショップでしばしば取り上げられる。和声は複雑だが、旋律は簡潔で、フレーズの呼吸とダイナミクスの設計が上達の鍵になるためだ。録音技術が進歩した現代でも、あえて余白を活かす録り方が推奨され、マイクの置き方や残響の扱いまで議論が及ぶ。配信時代においても、短時間で深い情感を提示できるバラードとしてプレイリストに定着している。

まとめ

Monk's Mood は、モンクの内省と革新が同居する稀有なバラード。精妙な和声、間合い、抑制の美学が核であり、名手ほど静かに語るほどの深みが表れる。初出の細部は情報不明ながら、今日まで不変のスタンダードとして愛奏され続けている。