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Moonlight In Vermont

  • 作曲: SUESSDORF KARL
#スイング#スタンダードジャズ
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Moonlight In Vermont - 楽譜サンプル

Moonlight In Vermont|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Moonlight In Vermontは、Karl Suessdorf(作曲)とJohn Blackburn(作詞)による1944年発表のジャズ・バラード。アメリカ北東部バーモント州の四季の情景を描いた歌詞と、ゆったりとした旋律美で愛されてきた。発表直後から多くの歌手・奏者に取り上げられ、今日ではアメリカン・ソングブックを代表するジャズ・スタンダードの一つとして定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲の最大の特色は、韻を踏まず、各節が俳句の五・七・五に近い音節構造で書かれている点にある(ブリッジ部を除く)。情景を静かに描く言葉の運びに呼応して、メロディは長い音価と滑らかな跳躍を多用し、間合いの美しさが際立つ。演奏では、自由なテンポのイントロからスロウ〜ミディアム・スロウのバラードへ移行するスタイルが親しまれ、ブラシによる穏やかなスウィングや、ピアノのアルペジオとサステインを生かした伴奏が効果的。ボーカル+ピアノ(またはギタートリオ)、小編成コンボ、ストリングスを伴うビッグバンド・バラードなど、多様な編成で成立する適応力の高さも魅力である。

歴史的背景

第二次世界大戦期の1944年に発表。都会的洗練と自然への憧憬が共存する当時のポピュラー音楽潮流の中で、詩的な情景描写を前面に出した本曲は独自の存在感を示した。ラジオやダンスバンドのレパートリーを通じて広く浸透し、早期から多くの歌手が取り上げることで、戦後のアメリカン・ソングブックに不可欠の一曲として定着した。初期の録音としてはマーガレット・ホワイティングらのヴァージョンが知られ、一般聴衆にも広まっていった。

有名な演奏・録音

ギターのジョニー・スミスがスタン・ゲッツと共演した1952年の録音は、清澄な和音運びとクールな抒情で名演として語り継がれる。エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングによる1956年のデュエットは、温かな掛け合いとリラックスしたテンポでスタンダード解釈の規範となった。ほかにも多くのボーカリストやモダン・ジャズ奏者がレパートリーに含め、ライブやセッションで繰り返し演奏され続けている。

現代における評価と影響

Moonlight In Vermontは、ボーカル物の教材・実演曲として定評があり、抑制された表現の中で言葉とメロディの間をどう活かすかを学ぶ好例とされる。インストゥルメンタルでも、歌心を保ったフレージングやダイナミクス設計を引き出す題材として重宝される。レコーディングやコンサート・プログラムでも依然高頻度で取り上げられ、四季や風景をテーマとする企画において定番曲の地位を保っている。

まとめ

俳句的な言葉運びと静謐な旋律が織りなす本曲は、時代を超えて演奏者と聴き手の想像力を刺激し続けるジャズ・スタンダードである。多様な編成に適応し、表現の幅が広いことから、今後も定番として生き続けるだろう。