サンタ・ルチア
- 作曲: E A MARIO,GAETA GIOVANNI ERMETE

サンタ・ルチア - 楽譜サンプル
サンタ・ルチア|歌詞の意味と歴史
基本情報
本作はE.A.マリオ(本名:ジョヴァンニ・エルメーテ・ガエータ)が1919年に発表したナポリ歌曲「Santa Lucia luntana」を指す。日本では短く「サンタ・ルチア」と表記される場合があるが、伝承曲として知られるテオドロ・コットラウ編の「Santa Lucia」とは別作品である。本稿ではE.A.マリオ作の同曲に焦点を当てる。原語はナポリ方言、作詞作曲ともE.A.マリオ。
歌詞のテーマと意味
歌詞は海を舞台に、故郷ナポリの海辺地区サンタ・ルチアを遠くから思い描く心情を描く。船上から揺れる灯りや波のリズムが感覚的に呼び起こされ、離れて暮らす者が抱く郷愁、家族や街への愛着、帰還への希求が重層的に表現される。過度な装飾を避けた語り口と、旋律の上昇・下降が溜息のような情感を補い、聴き手に普遍的な“ふるさと”のイメージを喚起する。
歴史的背景
第一次大戦直後の1919年、南イタリアから北欧・アメリカへと渡航する人々が多かった時代に生まれた本作は、移民や船乗りの視点から故郷への思いを歌い、ナポリ歌曲の重要レパートリーとなった。作者E.A.マリオは愛国歌から抒情歌まで多彩に手がけ、その語法を本曲でも活かしている。バルカローレ的な揺れを感じさせる拍節と、歌唱主体の旋律美が特徴で、ピアノ伴奏やオーケストラ編曲でも広く演奏される。
有名な演奏・映画での使用
録音は世界のテノール陣に愛され、エンリコ・カルーソー、ベニャミーノ・ジーリ、ルチアーノ・パヴァロッティらの名唱で広く知られる。ギター伴奏やマンドリン合奏など、編成を変えた演奏も多い。映画やテレビでの使用については、作品名・時期とも情報不明。確認可能な情報があれば追記されたい。
現代における評価と影響
今日でもリサイタルやナポリ歌曲のガラ公演で定番曲として取り上げられ、イタリア語・ナポリ方言の発音やレガート歌唱の教材としても重宝される。日本では題名が短縮されることで伝承曲「Santa Lucia」と混同されやすく、演目表記に配慮が求められる。一方で、郷愁と海の情景を描く普遍性は国境を超えて支持され、合唱編曲や器楽ソロ版も継続的に出版・演奏されている。
まとめ
E.A.マリオの「サンタ・ルチア(サンタ・ルチア・ルンターナ)」は、移ろう波と灯りに郷愁を重ねたナポリ歌曲の佳品である。1919年当時の社会背景と響き合いながら、現在も多様な歌手・編成で生き続ける。伝承曲「Santa Lucia」とは別作である点を押さえ、作品本来の歴史と歌詞の意味を踏まえて味わいたい。