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Nancy

  • 作曲: VAN HEUSEN JIMMY,SILVERS PHIL
#スタンダードジャズ
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Nancy - 楽譜サンプル

Nancy|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Nancy」は、しばしば「Nancy (with the Laughing Face)」として記載されるアメリカ発の名バラード。作曲はジミー・ヴァン・ヒューゼン、作詞はフィル・シルヴァース。初出は1942年とされ、ジャズ・スタンダード/トラディショナル・ポップの文脈で広く演奏されてきた。英語歌詞の楽曲だが、インストゥルメンタルとしての解釈も多く、ヴォーカルとジャズ・サックス双方の重要レパートリーとして定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

落ち着いたテンポで歌われる抒情的バラード。柔らかな旋律線と長い歌い回しが特徴で、フレーズ終端に呼吸の余白を持たせる表現が映える。ヴォーカルでは微細なヴィブラートやレガート主体のフレージングが好まれ、イントロで自由なルバートを置く解釈も一般的。インスト演奏では、歌の旋律を尊重したシンプルなテーマ提示ののち、コード進行に基づく控えめなアドリブを展開することが多い。ダイナミクスの緩急と音色の変化で情感を積み上げる点が聴きどころとなる。

歴史的背景

第二次世界大戦期のアメリカで誕生し、フランク・シナトラが紹介して広く知られるようになった。タイトルにちなみ、娘ナンシーへの思いと結び付けて語られることがあるが、誕生由来の詳細については情報不明。いずれにせよ、ラジオとレコードを通じて人気を獲得し、戦後のスタンダード曲として確固たる地位を築いた。ヴァン・ヒューゼンはシナトラの重要なソングライターの一人でもあり、本曲はその関係性を象徴するレパートリーとして位置づけられている。

有名な演奏・録音

決定的な名唱としてフランク・シナトラの録音が挙げられる。彼の包容力ある声質とフレージングは本曲の解釈の規範を作ったと言える。加えて、ジョン・コルトレーンのアルバム「Ballads」に収録されたテナー・サックス版は、インスト解釈の代表例。歌心を前面に出しつつ、過度な技巧を抑えた抑制の美学で、以後の管楽器奏者に強い影響を与えた。他にも多くのジャズ・ヴォーカリストやピアニストが取り上げ、長年にわたり録音が続いている。

現代における評価と影響

今日でもジャズ教育現場やセッションで頻繁に選ばれるバラードであり、歌詞の情緒と旋律の美しさを活かす教材曲としても評価が高い。ヴォーカルは言葉の響きと間合い、インストは音色とサスティンのコントロールなど、基礎的スキルの成熟を測る一曲として重用される。プレイリスト文化の中でも夜のリスニングやチルアウト系の選曲に馴染み、時代を超えて聴かれ続けるスタンダードとしての存在感を保っている。

まとめ

「Nancy」は、端正な旋律と深い情感が結び付いた不朽のバラード。シナトラの名唱とコルトレーンの静謐な解釈に代表されるように、歌と器楽の両面で豊かな表現を可能にする。誕生の細部には情報不明な点が残るものの、スタンダードとしての価値は揺るがず、今後も演奏家とリスナーの双方に愛され続けるだろう。