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ミラボー橋/Le Pont Mirabeau

  • 作曲: FERRE LEO ALBERT CHARLES ANTOINE
#シャンソン
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ミラボー橋/Le Pont Mirabeau - 楽譜サンプル

ミラボー橋/Le Pont Mirabeau|歌詞の意味と歴史

基本情報

「ミラボー橋/Le Pont Mirabeau」は、レオ・フェレ(FERRE LEO ALBERT CHARLES ANTOINE)が作曲し、ギヨーム・アポリネールの同名詩に旋律を与えたシャンソン。フランス語歌唱で、題名はセーヌ川に架かるパリのミラボー橋を指す。詩はアポリネールの詩集『アルコール』(1913)に収められている。楽曲としての初出年は情報不明だが、フェレ自身の録音が広く知られ、文学と大衆音楽を結ぶ代表的成果の一つとされる。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、流れる川と過ぎ去る恋を対比し、時間の不可逆性と記憶の残響を描き出す。橋の下を絶え間なく流れるセーヌは、失われた愛の比喩であり、反復される印象的なリフレインが、時の経過と孤独の感覚を強調する。語彙は簡潔で象徴的だが、語順や音節の配置が音楽と結びつくことで、冷ややかさと情感の両立が生まれる。フェレの旋律は高揚と沈潜を行き来し、詩の硬質な美を損なわずに感情の輪郭を浮かび上がらせる。

歴史的背景

背景には、前衛詩人アポリネールが近代都市の感覚と個の感情を結びつけた革新的な詩作がある。『アルコール』収録のこの詩は、伝統的韻律を踏まえつつも20世紀的な感性で再構成された。一方、戦後フランスで活動したフェレは、詩人たちの言葉をシャンソンに取り込み、演奏会やレコードを通じて広い聴衆へ橋渡しした。文学とポピュラー音楽の境界を横断する営みの中で、本作は象徴的な位置を占める。

有名な演奏・映画での使用

有名な演奏としては、作曲者レオ・フェレ自身のステージと録音が基準とされる。詩の朗読会や文学イベントでの演奏例も見られるが、具体的な商業映画・ドラマでの使用については情報不明。他歌手による代表的カバーの体系的資料も情報不明である。確認可能な範囲では、フェレ版が最も参照され、解釈の土台として扱われることが多い。

現代における評価と影響

今日では、フランス語圏の教育や詩と音楽の関係を論じる場で頻繁に取り上げられる。詩の韻律と歌のフレージングを緊密に結びつけた作曲は、文学作品の歌唱化の模範例とされ、言葉の意味と音の運動が互いに照らし合う構造が評価の核心にある。シャンソンが単なる娯楽にとどまらず、詩的表現の器となり得ることを示した点で、文化的意義は現在も揺るがない。

まとめ

「ミラボー橋」は、詩的言語の硬質さと歌の抒情を両立させた稀有な作品であり、時間と愛という普遍的主題を都市の風景へと結晶させた。初演や映像使用の詳細は情報不明だが、レオ・フェレの詩篇との対話を体現する重要作として、シャンソンと文学双方の文脈で聴き継がれている。詩を味わう入口としても、音楽的解釈の深さを知る手がかりとしても有用だ。