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Nefertiti
- 作曲: DAVIS MILES

Nefertiti - 楽譜サンプル
Nefertiti|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Nefertiti」は、マイルス・デイヴィスの第二期クインテットによる1967年録音の代表曲で、同名アルバムの1曲目として知られる。一般的な楽曲クレジットでは作曲はウェイン・ショーターとされるが、出典により表記揺れが見られる。歌詞は存在せず純然たるインストゥルメンタルで、現在ではジャズ・スタンダードとして多くのミュージシャンに演奏されている。初出の演奏メンバーは、Miles Davis(tp)、Wayne Shorter(ts)、Herbie Hancock(p)、Ron Carter(b)、Tony Williams(ds)の5人。録音はコロンビア・レコード、リリースは1968年。楽曲名の由来や命名意図は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
本作最大の特徴は、ホーンがテーマを反復し続け、即興の主導権をリズムセクションが担う倒置的な構図にある。デイヴィスとショーターはブレスとダイナミクスを精妙にコントロールして旋律を重ね、トニー・ウィリアムスはスウェルするシンバルワークでうねりを作る。ハービー・ハンコックは和声を微細に変化させ、ロン・カーターは柔軟なボトムで推進力を与える。定型的なソロの区切りはなく、モーダルな浮遊感と反復による緊張が持続。中庸のテンポと簡潔な主題が、音色とテクスチャの変奏を際立たせている。
歴史的背景
1960年代後半、第二期クインテットはポスト・バップを発展させ、フォルムや役割分担を再定義していた。「E.S.P.」「Miles Smiles」「Sorcerer」へと続く流れのなかで、「Nefertiti」はアコースティック編成の到達点を示す一頁とされる。スタジオでの編集に依存せず、アンサンブルの呼吸で構築されたサウンドは、翌70年代のエレクトリック期へ移行する前夜の美学を鮮明に刻む。曲名は古代エジプトの王妃ネフェルティティに由来するが、命名の具体的意図は情報不明である。
有名な演奏・録音
決定的な参照音源はマイルス・デイヴィス『Nefertiti』(Columbia, 1968)。以後、この曲はコンボ編成のレパートリーとして広く普及し、ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックの各グループでもしばしば取り上げられている。教育現場でも教材として定着し、リハーモナイズや変拍子化など多様な編曲例が存在する。特定の映画やドラマでの顕著な使用例は情報不明。
現代における評価と影響
ホーンがテーマを吹き続けるというアイデアは、ジャズにおける即興と伴奏の関係を問い直すモデルとなり、現代ジャズのアレンジ手法や集合即興の設計に影響を与えた。単純な譜面情報以上に、ダイナミクス、音色、スペースの扱いが音楽の中核を成し得ることを示す教材として、演奏家・教育者の双方から高い評価を受けている。
まとめ
「Nefertiti」は、形式の転倒を通じてアンサンブルの可能性を拡張した金字塔である。簡素な主題と反復を核に、五者の相互作用が立体的な音世界を築くそのアプローチは、録音から半世紀を経た今日もなお新鮮で、ジャズ・スタンダードとしての生命力を保ち続けている。