ムーラン・ルージュの歌/Moulin Rouge
- 作曲: AURIC GEORGES ABEL LOUIS

ムーラン・ルージュの歌/Moulin Rouge - 楽譜サンプル
「ムーラン・ルージュの歌/Moulin Rouge|作品の特徴と歴史」
基本情報
『ムーラン・ルージュの歌/Moulin Rouge』は、AURIC GEORGES ABEL LOUIS(一般にはジョルジュ・オーリックとして知られる)が作曲した映画『ムーラン・ルージュ』(1952年公開)の主題音楽。日本ではテーマ曲を指して「ムーラン・ルージュの歌」と呼ぶことが多い。原曲は劇伴として制作され、その後に歌詞が付与されポピュラー領域でも広まったが、本作の出自は映画音楽にある。室内的な繊細さとオーケストラの広がりを併せ持ち、映画の世界観を支える代表的なテーマとして位置づけられている。
音楽的特徴と表現
最も印象的なのは、穏やかな三拍子に乗る流麗な旋律線である。弦楽を中心に、木管が色彩を添える編成が多用され、歌のように親しみやすいフレーズが情感豊かに展開する。ゆるやかなテンポ設定と明確な主旋律により、叙情的でありながら過度に感傷的にならない均衡が保たれている。和声進行は分かりやすいトニック/ドミナントを軸にしつつ、場面転換に応じて転調や装飾的な半音進行を用いて映画的な陰影を創出。劇中のロマンスや哀感を、旋律のカンタービレと透明感のあるオーケストレーションで描き出す。
歴史的背景
作曲者オーリックはフランスの作曲家で、映画音楽でも重要な業績を残した。『ムーラン・ルージュ』はジョン・ヒューストン監督による1952年の作品で、19世紀末パリの雰囲気を背景に物語が展開する。テーマ音楽は公開後まもなく独立した楽曲としても親しまれ、後年には歌詞付きバージョンが制作され世界的に普及した。映画音楽としての機能性と、独立した名旋律としての魅力を兼ね備えたことが、長期的な人気を支える要因となった。
使用された映画・舞台(該当時)
本楽曲は映画『ムーラン・ルージュ』(1952年)で、象徴的なラブテーマ/主題として繰り返し用いられ、登場人物の心理や場面の転調に合わせて編曲やテンポを変えながら回帰動機として機能した。ダンスや酒場の情景など、映画のキー・シーンにおいて旋律が観客の記憶を喚起する役割を担い、視覚表現と音楽の結びつきを強めている。舞台版や同名別作品の使用については情報不明。
現代における評価と影響
映画音楽由来の名旋律として、コンサートのポップス・プログラムやサロン風のアレンジでも定番視される。公開翌年以降、オーケストラ編成による録音が英米でヒットし、映画発のメロディが大衆音楽としても成功し得ることを示した点で象徴的だ。今日でも映画音楽史の文脈でしばしば引用され、1950年代のロマンティックなサウンドの代表例として紹介されるほか、映像のシーン転換に呼応するテーマ提示の手法は後続の作曲家にも影響を与えている。
まとめ
『ムーラン・ルージュの歌』は、映画のドラマを支える主題として生まれ、独立曲としても愛されてきた稀有なテーマである。三拍子の優美な旋律と明快なオーケストレーションは、作品世界のエレガンスと切なさを両立させる。映画音楽の文脈に根差しつつ、録音や演奏を通じて広く普及した本曲は、1950年代映画音楽の精華として、今なお新たな聴衆を惹きつけ続けている。