モンマルトルの丘/COMPLAINTE DE LA BUTTE
- 作曲: VAN PARYS GEORGES EUGENE EMILE

モンマルトルの丘/COMPLAINTE DE LA BUTTE - 楽譜サンプル
モンマルトルの丘/COMPLAINTE DE LA BUTTE|歌詞の意味と歴史
基本情報
フランス語原題La Complainte de la Butte、日本語題「モンマルトルの丘」は、作曲家ジョルジュ・ヴァン・パリスによるシャンソン。1955年公開の映画『フレンチ・カンカン』のために書かれ、舞台となるパリ・モンマルトルの情景を象徴する挿入歌として知られる。歌詞はフランス語で、哀愁を帯びた旋律とワルツ風の趣が特徴。作詞者は情報不明。
歌詞のテーマと意味
歌詞は「丘(ブット)」への嘆き=恋の痛みを重ね合わせ、夜の街灯、石畳、急な階段といった情景を通じて、陶酔と傷心の揺らぎを描く。モンマルトルという芸術家の街の記憶を、恋人たちのささやきや酔いの比喩で包み、切なくも官能的な空気を作り出す。物語性が強く、独白的に進むため、歌い手の表現力が作品の印象を大きく左右する。
歴史的背景
1950年代のパリは戦後復興とともにキャバレー文化が再活性化し、19世紀末ベル・エポックの記憶が再評価された時代。『フレンチ・カンカン』はその熱気を再現し、楽曲は物語の情緒と地域性を凝縮する役割を担った。短い旋律単位の反復と素朴な和声配置により、観客に即時的な郷愁を喚起する設計がなされている。
有名な演奏・映画での使用
公開以降、同曲は多くの歌手に取り上げられ、コンサートの定番曲となった。特に国際的な再注目の契機として、2001年の映画『ムーラン・ルージュ』での採用が挙げられる。サウンドトラックではルーファス・ウェインライトがフランス語で歌唱し、原曲の官能と憂愁を新世代のリスナーに伝えた。映画・舞台での使用例はその後も継続している。
現代における評価と影響
今日では、フランス語圏外でも“モンマルトルらしさ”を喚起する楽曲として選ばれ、シャンソン・レパートリーの中核に位置づけられる。発声やフレージングの学習曲として音楽学校で扱われるほか、アコーディオンや小編成伴奏でも映えるため、ストリートからホールまで場面を問わず演奏される。カバーの解釈幅が広い点も評価される。
まとめ
映画発の挿入歌でありながら、都市の記憶と恋の痛みを普遍化したことで、時代や国境を越えて歌い継がれてきた一曲。モンマルトルの風景を心に映す窓として、今後も数多くの歌手・演奏家により再解釈され続けるだろう。