Nice Work If You Can Get It
- 作曲: GERSHWIN GEORGE,GERSHWIN IRA

Nice Work If You Can Get It - 楽譜サンプル
Nice Work If You Can Get It|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Nice Work If You Can Get It は、ジョージ・ガーシュウィン(作曲)とアイラ・ガーシュウィン(作詞)による1937年の楽曲。映画「A Damsel in Distress(踊る騎士)」でフレッド・アステアが歌い広く知られるようになり、その後ジャズ・レパートリーの定番として定着した。洒脱なタイトル・フレーズと都会的なハーモニーが特徴で、アメリカン・ソングブックを代表する一曲として位置づけられている。
音楽的特徴と演奏スタイル
典型的な32小節AABA形式で、ミディアム〜ミディアムアップのスウィングで取り上げられることが多い。Aセクションは明快なモチーフの反復とステップワイズな動き、Bセクションは転調感とセカンダリー・ドミナントを含む循環が現れ、ソロ展開に適したII–V–I連鎖が豊富。ヴォーカルはルバートな前振りからスウィングへ移行する解釈も一般的で、歌詞の軽妙さを活かすためにシンコペーションとダイナミクスのコントロールが鍵となる。ピアノやギターでは拡張和音(9th, 13th)を用いたコンピングが映え、エンディングはタグ反復やフェルマータで余韻を持たせるアレンジが定番。
歴史的背景
本作はジョージ・ガーシュウィン晩年の成果の一つで、1937年に公開の映画のために書かれた。ブロードウェイとハリウッド双方で活躍した兄弟のコラボレーションの成熟期に位置し、都会的ウィットとジャズ語法の折衷が明確に表れている。スクリーンを通じて初期から大衆に届いたことにより、同時代のバンドや歌手が次々とレパートリーに加え、スタンダード化が急速に進んだ。
有名な演奏・録音
初演で注目を集めたフレッド・アステアの歌唱に続き、ビリー・ホリデイ(1937年)の録音はジャズ的解釈を広める重要な一例とされる。エラ・フィッツジェラルドは名盤『Gershwin Songbook』(1959年)で洗練されたスウィング感と発音美を示し、フランク・シナトラは『A Swingin’ Affair!』(1957年)で洒脱なアレンジの中に軽快なグルーヴを刻んだ。これらの録音は、ヴォーカルとビッグバンド/スモールコンボ双方で映える楽曲性を明確に伝えている。
現代における評価と影響
今日もジャズ教育現場やセッションで頻繁に扱われ、AABA形式と標準的なコード循環を学ぶ教材として活用される。スタンダード集や譜面集にも高頻度で収録され、ヴォーカル・オーディションやリサイタルの定番曲としても人気が高い。また、2012年のブロードウェイ・ミュージカル『Nice Work If You Can Get It』ではタイトル曲として再注目され、ガーシュウィン作品群の魅力を新世代に橋渡しする役割を果たした。
まとめ
映画発のポピュラー曲でありながら、ジャズ語法と都会的センスを兼ね備えた本作は、形式・ハーモニー・メロディの三拍子がそろった“教材にして名曲”。多様なテンポや編成に耐える懐の深さが、長年にわたるスタンダードとしての生命力を支えている。入門者には構造の明快さが、上級者には解釈の幅広さが魅力となるだろう。